JRA神戸新聞杯が「まるでG3」の絶望!? シャフリヤール、コントレイル、サートゥルナーリア、エポカドーロ、レイデオロに続く「1番人気」はまさかの

ドウデュース 撮影:Ruriko.I

 ダービー馬のドウデュースがフランスの凱旋門賞(G1)へ、皐月賞馬のジオグリフ、2着イクイノックスが揃って天皇賞・秋(G1)へ――。

 3歳牡馬クラシックの締めくくりとなる今年の菊花賞(G1)は文字通りの主役不在、例年以上の大混戦になると見られている。そして、そんな「異例」の状況は、菊花賞のトライアルレースにまで影響が及んでいるようだ。

 菊花賞の王道トライアルといえば、何と言っても神戸新聞杯(G2)だろう。

 古くから菊花賞の前哨戦としての役割を果たしている神戸新聞杯だが、2000年に同じトライアルだった京都新聞杯(G2)が春に移設されてからは、完全に王道の中心となった。

 2005年のディープインパクトを始め、2011年からはオルフェーヴル、ゴールドシップ、エピファネイアと勝ち馬が3年連続で菊花賞を制覇。それ以降もサトノダイヤモンド、コントレイルといったところが連勝し、まさに本番に直結するトライアルの地位を確立している。

神戸新聞杯が「まるでG3」の絶望!?

 だが、今年はその神戸新聞杯がほとんど話題に上っていない。

 無論、まだ7月の下旬であり、レースが開催される9月までには時間がある。だが、有力馬の動向をチェックしている熱心な競馬ファンなら、毎年この時期には3歳牡馬のトップクラスと、春にはクラシックの壁に跳ね返された夏の上がり馬との激突に、一足早く胸を躍らせているはずだ。

プラダリア 競馬つらつらより

 あくまで現段階だが、このままだと今年の中心はダービー5着馬プラダリアか。

 ちなみに近5年の神戸新聞杯の1番人気と主な勝ち鞍は、昨年のシャフリヤール(日本ダービー)から、コントレイル(春二冠)、サートゥルナーリア(皐月賞)、エポカドーロ(皐月賞)、レイデオロ(日本ダービー)である。

 ダービートライアルの青葉賞(G2)を勝ち、本番でも5着と春にはトップクラスの存在感を示したプラダリア。今年1月デビューと遅咲きの馬だけに、秋の飛躍が楽しみな1頭ではある。

 だが、仮にこの馬が神戸新聞杯で1番人気になるなら、少々物足りなさを覚えるのは筆者だけではないだろう。

 次に現時点の報道で具体的に名前が挙がっているのは、京都新聞杯2着、京成杯(G3)3着など堅実な走りが光るヴェローナシチー、京都新聞杯で3着に敗れたが6月の一宮特別(2勝クラス)を勝った上がり馬のボルドグフーシュ。他にはスプリングS(G2)の勝ち馬ビーアストニッシドが、セントライト記念(G2)との両睨みと報じられた程度だ。

ジオグリフ

「この秋の菊花賞戦線はダービー馬のドウデュース、皐月賞馬のジオグリフ、春二冠でともに2着だったイクイノックスが不在の影響もあって、レベルの下降は仕方ないところですが、それにしても神戸新聞杯は寂しいメンバーになるかもしれません。

単純に5月の日本ダービー(G1)の上位陣を見ても1、2着は別路線ですし、3着のアスクビクターモアはセントライト記念。4着ダノンベルーガは、まだ正式な発表はないものの関東馬ですし、神戸新聞杯に出てくる可能性は低いでしょう。

そうなると5着のプラダリアが、順当に主役を務めることになるかもしれません。状況的に仕方のない部分もありますが、もしかしたら関係者にとって昨年の印象があまり良くなかったことも影響しているかもしれません」(競馬記者)

 記者が語った昨年の神戸新聞杯は、京都競馬場の改修工事の影響で2年連続の中京開催となったが、あいにくの雨で馬場がかなり重くなった不良馬場の中で行われた。

 結果的にはクロノジェネシスなどに代表されるように、産駒に無類の重馬場巧者が多いバゴを父に持つステラヴェローチェが快勝。その一方で、単勝1.8倍の支持を集めたダービー馬シャフリヤールは4着に敗れ、まさに馬場に泣いた敗戦となった。

シャフリヤール 競馬つらつらより

 それだけならまだよかったが、その後シャフリヤール陣営は不良馬場のダメージを考慮して、予定されていた菊花賞を回避。11月のジャパンC(G1)で出走をスライドさせた経緯がある。

 さらに勝ったステラヴェローチェこそ、その後も菊花賞と有馬記念(G1)で4着など気を吐いたが、2着レッドジェネシスは1番人気に支持された菊花賞で13着に沈むと、その後も二ケタ着順を繰り返し、つい先日の七夕賞(G3)でも15着と嘘のような大敗を喫している。

 また3着モンテディオも大敗した菊花賞からの仕切り直しとなった2勝クラスで躓き、3番人気で5着だったキングストンボーイも約8か月ぶりの復帰戦となった5月のメイS(OP)で2番人気8着と良いところなく敗れている。

「6着だったイクスプロージョンは先月に3勝クラスを勝ち上がりましたし、出走した全馬が調子を落としているわけではないですよ。ただ、同条件で行われた前年よりも勝ち時計が5.5秒も遅い不良馬場でのレースだっただけに、慣れない出走馬にとっては少なからずダメージの残る一戦となってしまったようです。

元々、京都競馬場の改修工事の影響で最も酷使されているのが中京競馬場。馬場造園課の方々を中心に懸命なケアが続いていますが、開催ごとにダメージが蓄積するのはある程度仕方ないと思います。今年の神戸新聞杯で雨が降ると決まったわけではないですが、関係者の頭には昨年の印象が残っているのかもしれませんね」(同)

 その一方で、今から例年以上の注目を集めているのが、もう1つの菊花賞トライアル・セントライト記念だ。

オニャンコポン

 先述したダービー3着馬のアスクビクターモアだけでなく、京成杯の勝ち馬オニャンコポン、プリンシパルS(L)を勝ったセイウンハーデスら春の実績組に対して、5月に1勝クラスを勝った3億円馬ダノンギャラクシー、今月の開成山特別(1勝クラス)を勝ったロンギングエーオなど楽しみな上がり馬も参戦を予定。

 また、今月の国東特別(1勝クラス)を7馬身差で圧勝したガイアフォースに至っては関西馬ながら、セントライト記念への出走を表明しているなど、今年は神戸新聞杯よりも見どころのあるメンバーになってもおかしくはない。

 1984年のシンボリルドルフから2015年のキタサンブラックまで連勝がなく、一時は「勝ち馬は菊花賞を勝てない」というジンクスまであったセントライト記念。

 しかし、昨年は1番人気で敗れたタイトルホルダーが菊花賞で巻き返し、3着だったオーソクレースが2着とセントライト記念組のワンツー。一昨年も2着馬サトノフラッグが本番でも3着するなど、神戸新聞杯組に負けない活躍馬を送り出している。

 長年、菊花賞トライアルは完全な西高東低の間柄にあったが、今年は逆転現象が見られるかもしれない。

(文=銀シャリ松岡)

<著者プロフィール>
 天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。

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