福永「大舞台に強い」は幻想!? 春G1・2勝の裏で不思議な法則
皆さんは重賞レースにおいて「買える騎手」と聞かれて誰を思い浮かべるだろうか。様々なトップジョッキーの名が挙がると思われるが、中でも福永祐一騎手を挙げるファンの方も少なくないのではないか。真っ先に名前は出なくとも、福永騎手の名を挙げられて異を唱えるファンは少数派だろう。
だが、そうした重賞で「信頼できる」というファンの印象とは裏腹に、今年の重賞戦線で福永騎手は相当な苦戦を強いられている。
春はG1・2勝の大活躍も……
これを聞いて「G1を2勝もしていてどこが苦戦なんだ」と思われる読者の方も多いだろう。だが実は福永騎手が今年勝利した重賞レースは、その2勝のみ。つまりはカフェファラオに騎乗したフェブラリーS(G1)、ジオグリフに騎乗した皐月賞(G1)だけということだ。
また、勝利した2つのG1レースを除くと重賞では2着が2度あるのみで、そのほかは全て馬券圏内に食い込むことができていない。福永騎手は今年の重賞レースはこれまで29鞍に騎乗しているが【2-2-0-25/29】、単勝回収率は48%、複勝回収率は27%と、トップジョッキーとしてはかなり低調な数字となっている。
勝利した2つのレースが注目度の高いG1レースであるために印象は薄いかもしれないが、今年の戦績を見る限り、福永騎手は重賞戦線で絶不調といってもいいだろう。多くのファンが抱くであろう「重賞で買える」というイメージとは裏腹な戦績が続いている状況だ。
この福永騎手の極端な不振の要因はいったい何なのか……。その理由は定かではないが、実は福永騎手の重賞レースと不思議な相関関係を見せているのが、競馬場の観客動員の変化である。以下に示す、福永騎手の近5年の年別の重賞成績を見ていただきたい。
18年 5-6-5-54/70
19年 6-7-10-47/70
20年 11-7-7-37/62
21年 10-11-10-37/68
22年 2-2-0-25/29(現時点)
このように18年、19年と比較して20年、21年には重賞勝利数がおよそ倍増していることが見て取れる。特に20年にはコントレイルと共に無敗でのクラシック3冠を達成、翌21年にもシャフリヤールで日本ダービー(G1)を勝利するなど、ビッグレースで獅子奮迅の活躍を見せていた。
ただ、この福永騎手が大活躍をみせていた時期は、偶然にも新型コロナウイルスの感染拡大の影響でJRAが無観客競馬や観客数の制限を行っていた時期と一致しているのである。
福永騎手の重賞レースでの不振だが、この流れが始まったのは21年の11月まで遡る。この年の10月には重賞10鞍に騎乗し(2-2-4-2)と圧巻の成績を残した福永騎手であったが、11月に入るとその勢いは一転。11月以降はコントレイルで勝利したジャパンC(G1)を除くと、1度も馬券圏内に食い込むことができなかった。
この10月から11月にかけては、ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大も収束の兆しをみせ、JRAによる観客動員の制限も徐々に緩和された時期にあたる。以降もJRAは観客動員制限の緩和を進め、気づけば今年の春には多くのファンがスタンドに入るようになった。
一方で不思議なことにそれとリンクするように、福永騎手の重賞戦線での不振は現在まで続いているのである。
観客動員と福永騎手の好不調に見られる不思議な相関関係。多くのファンが競馬場に足を運べるようになることは喜ばしいことだが、重賞戦線で福永騎手が鳴りを潜めている現状はファンとしては寂しいところ。福永騎手にはこの「奇妙なジンクス」を打ち破り、昨年、一昨年のような重賞戦線での大活躍を観衆の前で見せてもらいたい。
(文=エビせんべい佐藤)
<著者プロフィール>
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。