リバティアイランド「コンビ解消」に隠し切れぬ自信?
2歳馬が続々とデビューしている夏競馬のシーズン。先週末の新潟で大きな注目を集めたのは、7月31日の2歳新馬だ。
このレースでは、2021年セレクトセール1歳部門で1億6500万円(税抜き)で落札されたダノントルネードと同2億2000万円(税抜き)のシャザーンの対決が実現。2頭合わせて約4億円の豪華な顔触れが揃ったが、ハナ差の激闘を制したのはダノントルネードだった。
同馬に騎乗した川田将雅騎手は「強い馬がいると目一杯走らざるをえない」とライバルに敬意を表しつつ、今後を見据えると「大きなハナ差ですね」と評価。敗れたシャザーンに騎乗した福永祐一騎手も「できれば勝っておきたかったです」と悔いたものの、「相手も走りますからね。しっかりと素質を見せてくれました」と前向きなコメントを残した。
「コンビ解消」に隠し切れぬ自信?
いずれも来年のクラシックを狙える好素材であることは間違いないのだが、レースの衝撃という意味では前日の30日に行われた2歳新馬を圧勝したリバティアイランド(牝2、栗東・中内田充正厩舎)に軍配が上がったことに触れておきたい。
先述した2頭の戦いが、逃げたシャザーンを2番手から交わしたダノントルネードという構図。高額落札馬2頭の能力が拮抗していたための接戦だったことは分かるが、こちらは直線7番手から楽に差し切って3馬身差の完勝。それも上がり3ハロン31秒4のとんでもない切れ味だったのだから、もし3頭が一堂に会していたらどのような展開になったのかと興味が湧く。
実際、高速馬場で開催されることも少なくない新潟は、速い上がりが出やすいことも確かだ。それでも32秒台ならともかく31秒台は破格の数字。新潟以外も含めたJRAのレースで31秒4は史上最速タイの上、もう1頭がマークしたのは直線1000mで開催された今年の韋駄天S(OP)である。
韋駄天Sは新潟特有の「千直」レース。これに対してリバティアイランドのデビュー戦は芝1600mなので古馬より3ハロン距離が長い条件。2歳馬がこんな数字を出したことが既にあり得ないレベルといっていい。
それだけに、次走にどのレースが選択されるのかについては、秋の重賞も視野に入ってきそうだが、陣営が新潟2歳S(G3)と発表したのは、少々意外なレース選択だったようにも感じられる。
しかも、これだけの実力が分かっていながら、新潟2歳Sが開催される当日は、主戦の川田騎手が2022ワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)に参戦するため不在。あまりにも早過ぎるコンビ解消にも感じられるものの、どのような事情があるのだろうか。
「牝馬限定重賞であるアルテミスS(G3)に使うという見方も多かったですが、中3週の新潟2歳Sなら妥当なところでしょう。ただ、引っ掛かるのは川田騎手が乗れないことが分かっているにもかかわらず、出走を視野に入れたことです。
ただ裏を返せば、陣営が既に誰が乗っても勝てるくらいに、リバティアイランドを評価しているということかもしれません。あくまでこれは憶測に過ぎませんが、賞金を加算してから再び川田騎手に戻して大きなところを狙う気がします」(競馬記者)
勿論、新潟2歳Sに使ったとしても、アルテミスS出走の可能性がなくなったわけではないが、川田×中内田のコンビで新馬から新潟2歳Sといえば、昨年のセリフォスを思い出させるローテーション。再び衝撃的な圧勝劇を演じるようなら、来年のクラシックに早くも「当確ランプ」が点灯するかもしれない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。