ウマ娘オーナーも期待、新種牡馬産駒の“真打ち”登場
6日の新潟5R・2歳新馬(芝1800m)は11頭立てながら、良血馬を中心に好メンバーが揃った。
近親に2017年の菊花賞馬キセキがいるタイセイマイティ、祖母がいずれもJRA重賞ウイナーのエイシンエランとサウンドアルジュナなどが初戦Vを狙う。
新種牡馬産駒の“真打ち”登場
そんな中、1番人気に支持されるのはおそらくこの馬だろう。16年のドバイターフ(G1)覇者リアルスティールを父に持つフェイト(牡2歳、栗東・矢作芳人厩舎)だ。
父リアルスティールは、ディープインパクトの後継種牡馬候補として、この夏に初年度産駒がデビュー。先日行われたセレクトセールでも少なくない産駒が高値を付け、馬産地からの期待は大きい。
ところが、これまでJRAでデビューした15頭の産駒のうち、勝利したのは牝馬のニシノトキメキだけ。同馬が挙げた唯一の勝利も小倉芝1200mの未勝利戦で、来年のクラシックを意識させるような産駒はまだ出てきていない。
期待に応えられていない父の救世主となるべく、登場するのがリアルスティール産駒の“真打ち”とも評されるフェイトというわけだ。その評価は育成時代から高かったという。
「ノーザンファーム空港での育成時代からバランスのいい馬体、強靭なトモ、そこから生まれる俊敏な動きは評判になっていました。栗東トレセンに入厩すると、5月には早々とゲート試験に合格。いったん放牧に出ましたが、7月に帰厩すると、その後はピッチを上げて、臨戦態勢は整いました。
注目される理由の一つはオーナーの存在もあるかもしれません。『ウマ娘オーナー』としても知られる藤田晋氏が昨年のセレクトセールで1億7600万円(税込)の大枚をはたいて落札した期待馬ですし、狙うは1着だけでしょうね」(競馬誌ライター)
馬主として2年目を迎えた藤田オーナーだが、実は4月のニュージーランドT(G2)をジャングロが勝利したのを最後に4か月近くも所有馬が勝っていない。
特に誤算なのが2世代目にあたる2歳馬。すでに4頭がデビューし、いずれも上位人気に推されたが、いまだ勝利には至らず。藤田オーナーとしてもそろそろ2世代目の初日をあげておきたいところだろう。
藤田オーナーにとって何より心強いのが矢作調教師と福永祐一騎手の「チーム・リアルスティール」で臨めることだ。
現役時代のリアルスティールを管理した矢作師は、「(リアルスティール産駒の中で)この馬が一番」と、フェイトを高く評価。福永騎手も課題は挙げつつも、「ポテンシャルは高いと思う」と期待を寄せている。
思い起こせば、父リアルスティールは2歳の年末にデビューし、新馬、共同通信杯(G3)を連勝。クラシック3冠では全て2番人気に支持されたが、春2冠はドゥラメンテに、菊花賞はキタサンブラックに敗れ、3歳時は無冠の帝王などと呼ばれた。
そんな父よりも4か月以上も早い時期にデビューを迎えるフェイト。もちろん見据えるのは父が成し遂げられなかったクラシックホースの称号だろう。まずは初戦で素質の片鱗を見せることができるだろうか。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。