福永×矢作×藤田晋フェイトが圧勝デビュー!コントレイルとの比較は?
6日、新潟競馬場で行われた5Rの新馬戦は、1番人気のフェイト(牡2歳、栗東・矢作芳人厩舎)が勝利。新種牡馬リアルスティール産駒が5馬身差の圧勝で豪快なデビューを飾った。
「楽でした」
これまで数多の名馬に騎乗している福永祐一騎手も開口一番「楽勝」を認めた。11頭立て芝1800mのレース。「ゲートの駐立は少し悪かったですが、きちんと出てくれた」と鞍上が振り返った通り、フェイトは上手にゲートを出ると無理せず先行集団を見るような競馬。鞍上も「一番いいところで競馬ができました」と自画自賛する“絶好位”をゲットした。
戦前、陣営から「操縦性が良い」と評価されていたが、初レースにもかかわらず折り合いもピッタリ。単勝1.5倍の大本命馬が完璧な形で道中をクリアし、この時点で半ば勝負あったか。
新潟の外回りコースの長い直線を迎えると、各馬のアクションが大きくなる中、フェイトは1頭だけ馬なり。「追ってからはしっかりしてましたね」という福永騎手の言葉通り、鞍上がゴーサインを出すとあっという間に先頭に並びかけ、あとは独走だった。
結局、福永騎手がムチを入れることなく、最後は流し気味にゴール。2着ノエマを5馬身突き放す衝撃的なデビュー戦となった。
「評判通りの強い競馬でしたね。入厩した頃はデビューまで時間が掛かりそうな印象でしたが、1週前追い切りで福永騎手が騎乗するとスイッチオン。G1馬のダノンファラオと併せ馬で互角以上の動きを見せただけに、この日の単勝1.5倍は妥当な評価だったといえるでしょう。
父のリアルスティールは新種牡馬。ここまで勝ち上がりが1頭しかいないなど心配されていましたが、待望のクラシック候補が出たことで関係者もまずは一安心といったところでしょう。見た目以上に強いレースだったと思いますし、何と言っても福永騎手と矢作厩舎は、三冠馬コントレイルを手掛けたコンビ。今後が非常に楽しみな1頭と言えるでしょう」(競馬記者)
コントレイルとの比較は?
「センスもいいし、勝ちっぷりも良かったから言うことない。スピードが勝ってるから、距離はやってみないと分からないけどね」
上記は、2019年にコントレイルがデビューを勝った際の福永騎手のコメントだ。母がダートの短距離馬ということもあって、デビュー当初から距離の壁を心配されたコントレイルだが「福永騎手×矢作厩舎」の尽力もあって、翌年には菊花賞(G1)で3000mを克服し史上3頭目となる無敗三冠を達成している。
無論、いくら手掛けるスタッフが同じでも現時点で三冠馬と比較するのはフェイトがかわいそうだが「性格が大人しいので距離を延ばしやすそう」と福永騎手。こちらは距離の壁に心配がなさそうなだけに、むしろ菊花賞で本領発揮というシーンが見られるかもしれない。
また、フェイトは『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)で有名な藤田晋オーナーに昨年のセレクトセールにおいて1億6000万円で落札された良血馬だ。伯母サロミナは独オークス(G1)の勝ち馬で、いとこに有馬記念(G1)2着のサラキアや朝日杯フューチュリティS(G1)の勝ち馬サリオスがいるなど、血統背景もスケール感に溢れている。
比較的奥手の血統でもあり、入厩当初は目立った動きを見せられなかったフェイトも「まだトモが甘く、現時点の完成度は高くない」「来年はもっと良くなるはず」と福永騎手。だが、そんな状態でデビュー戦を圧勝したのだから極めて高い将来性があるといえるだろう。
「昨年、馬主デビューした藤田オーナーですが、所有馬のジャングロがニュージーランドT(G2)を勝つなど1年目からいきなり活躍し、世間から大きな注目を浴びました。他にも数少ない所有馬の中からドーブネ(ききょうS)やデュガがすでに2勝しており、“引き”の強さは折り紙付き。今年の所有馬はここまで未勝利とやや苦戦していましたが、ここで大物が出ましたね。今日の走りを見る限り、フェイトはG1を狙っていける器だと思います」(別の記者)
「じっくり育ててクラシック路線に乗せていけたら」
レース後、そうフェイトの将来を見据えた福永騎手。かつて父のリアルスティールや、無敗の三冠馬コントレイルを手掛けた「福永×矢作厩舎」から今年も大物候補が出現した。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。