元クラシック候補が武豊とコンビ解消!?不可解な路線変更と名門厩舎の後悔
14日は新潟で関屋記念(G3)、小倉で小倉記念(G3)の2重賞が開催される。夏競馬のローカル重賞は、中央開催の重賞に比べれば華はないが、馬券的に興味深いメンバーが揃う。
この裏開催となる札幌のメインはUHB賞(OP)。芝1200mのオープン戦だが、重賞好走馬などスプリント戦の常連メンバーが揃い、重賞並みの見応えあるレースが期待できそうだ。
ところで、ここに1頭「スプリント戦らしからぬ」馬が、登録しているのにお気づきだろうか。
それは昨年、クラシック開幕まで有力馬の1頭として幾度となく話題に上っていたディープモンスター(牡4、栗東・池江泰寿厩舎)である。
一昨年、小倉の新馬戦を除外されたあと、10月の京都で単勝1.4倍の圧倒的1番人気に応えて勝ち上がると、続くエリカ賞(1勝クラス)では2着に敗れたものの、梅花賞(1勝クラス)ではきっちり勝利を収め、クラシック出走を確実なものにするべく出走した、すみれS(L)でも2馬身半差で完勝してみせた。
肝心のクラシックでは皐月賞(G1)で主戦の武豊騎手から戸崎圭太騎手に乗り替わり7着。出走ラインが高くなって、出走が危ぶまれた日本ダービー(G1)でブービー負け。クラシックの有力候補という呼び声とは裏腹に散々な結果となった。菊花賞(G1)では春ほどの注目は浴びなかったものの、長距離戦であるいは? と期待されたものの5着まで。
そんな馬がスプリント戦?
菊花賞後は休養に入り、今年1月の白富士S(L)で復帰したが、この時は連勝街道を突っ走っていたジャックドールに1番人気を譲って3番人気。ところが結果は人気よりも低い5着に終わってしまった。ダービーもレコードとなる高速決着だったが、この時も勝ち時計が1分57秒4(良馬場)と芝2000m戦ではかなりの高速決着。持ち時計のないディープモンスターは追走で精一杯といったところだった。
そんな馬がスプリント戦? となるわけだが、本気で出走を狙っているのではなく、「権利獲り」を狙っての登録だったようだ。馬主のDMMバヌーシーも8月1日のツイートで「次走は9/4の丹頂S、鞍上は川田将雅騎手」と明言しており、ここは除外されることで次走の優先出走権を得られるシステムを利用しようとしているわけだ。
実際、UHB賞の登録メンバーは、重賞級のスプリンターが揃っており、賞金不足で除外される可能性が高い。
以前この記事でもディープモンスターについて触れているが、すみれSの後はクラシックを3戦しただけで、しかも3戦すべて敗れているので賞金が足りない。上記の記事では白富士Sへの出走を確実にしようとしたものだろうが、いいところなく負けているため、賞金不足で今後のローテーションにも影響が出てくるのは確実だろう。
そういう意味で、冬に続いて夏場のここでも敢えて除外狙いの権利獲りを仕掛けてまで、丹頂S(OP)に出走し、賞金を加算して秋に向けての一歩を踏み出したいのだろう。
ただ、池江調教師は馬の距離適性を見誤って「失敗だった」と認めたことがある。現役馬だがジャンダルムがそれだ。母が名スプリンターのビリーヴだが、父Kitten’s Joyはどちらかと言えば長い方が向いている血統。当初ジャンダルムは父親の血が強く出ていると判断され、クラシックに向かうが皐月賞9着、ダービー17着といいところなしに終わった。
これもあってマイルに舵を切ったが思うような結果が出ず、さらにスプリント路線まで距離短縮を図って、ようやく今年約4年ぶりの重賞2勝目を挙げることができた。つまり、当初は父方の血もあって距離に融通は利くとされていたが、実際は母系の血が強く出ていた馬だった。
ディープモンスターの場合、これまで芝2000m前後で結果が残っており、加えて菊花賞で5着まで入ったので、「長距離向き」と判断されたのかもしれないが、父はともかく母系はマイル前後に成績が残っている短距離馬。クラシックで結果を残せず、4歳になっても適距離と見られている芝2000m戦で敗れており、本当に中距離以上に適性があるのか疑問は残る。
3歳春から中距離以上でまともに走れていないだけに、どうせなら負けを覚悟で路線変更し、スプリント戦を使えば新境地が拓ける可能性はなきにしもあらず。もし出走が可能ならこのまま出走してしまえば、距離適性を見定める良い機会になったかもしれない。