「勝負弱い」イメージの払拭を…岩田望来が挑む因縁の関屋記念

イルーシヴパンサー 撮影:Ruriko.I

 14日、新潟競馬場で行われるサマーマイルシリーズの第3戦・関屋記念(G3)。夏の名物マイル重賞に「安田記念の1番人気」という看板を背負って登場するのが、イルーシヴパンサー(牡4歳、美浦・久保田貴士厩舎)だ。

 昨年6月の1勝クラスから3連勝で一気にオープン入りを果たすと、今年2月の東京新聞杯(G3)も勝って、あっさりと重賞の壁も突破。4連勝の勢いを買われた安田記念(G1)で1番人気に推された。

 ところが、結果は8着に敗れて連勝はストップ。また、そのレースぶりも17番手から後方待機で差し脚に賭けるも前が止まらず……。

 とはいえ、勝ったソングラインとは0秒2差。しかも最後の直線では内の馬と接触する不利がありながら、上がり3ハロンは出走馬の中で最速の32秒6をマークしている。そんなこともあって、道中の後ろ過ぎた位置取りを嘆く声も一部で出ていた。

 ただ、2度目のG1の舞台で、斤量58キロは初めてだったことを思えば、決して悲観する内容ではないはず。そんな馬がG3のレースに、それも斤量56キロで出てくるのだから、今回は人気を集めるのも仕方がないことだろう。

岩田望来騎手 撮影:Ruriko.I

 また、注目を集めるもうひとつの要素が、コンビを組んで5戦4勝の田辺裕信騎手ではなく、岩田望来騎手との新タッグで参戦するという点だ。

「勝負弱い」イメージの払拭を…

 同騎手は今年、ここまでリーディング4位となる71勝を挙げ、昨年のキャリアハイ88勝超えと、初の年間100勝に向けても期待が高まっている22歳の有望株。2月の京都牝馬S(G3)で待望の重賞初制覇を果たし、上半期だけで重賞2勝を挙げるなど飛躍のシーズンを送っている。

 さらなる高みを目指す上で、必要になってくるのが「大舞台で勝負弱い」というイメージの払拭だろう。

 今年2月に京都牝馬Sを制覇するまで、重賞で97連敗を喫した。中でも大きな挫折となったのが、2年前の関屋記念だ。

 自身の手綱でオープン馬へと導いたアンドラステとのタッグで挑んだ2年前の夏。キャリアで初めて「重賞の1番人気」というプレッシャーを背に挑んだが、結果は3着。悲願の頂点にはまたしても手が届かなかった。

 その後も2020年12月のターコイズS(G3)で2着、昨年6月のマーメイドS(G3)でも4着と、同コンビでは善戦はするものの「1着」が遠い。

川田将雅騎手

 そんな中で迎えた昨年7月の中京記念(G3)。アンドラステはキャリア12戦目にして待望の重賞初制覇を果たすのだが、その背にいたのは川田将雅騎手。岩田望騎手は10着に敗れたダノンチェイサーの馬上で相棒の悲願達成の瞬間を目の当たりにするという屈辱を味わった。

 追い打ちをかけるように、タッグ復活となった昨年の関屋記念で3番人気8着と敗戦。その後も府中牝馬S(G2)とターコイズSで2着に終わり、アンドラステは現役を引退。繁殖牝馬として第2の馬生を歩むことになった。

 結局、岩田望騎手はこの馬と計7度も重賞に挑んで勝利なし。これに対して川田騎手は一戦一勝。その事実がクローズアップされたことで、より「勝負弱い」というイメージが強く印象に残る形となってしまった。

 こうした悔しさと悲しみを糧に、4年目でついに重賞の壁をぶち破った岩田望騎手。ここからさらにステップアップしていくためには、“人気”という重圧を乗り越えてタイトルを重ねていくことが必要だ。

 重賞初制覇となった京都牝馬Sも5番人気のロータスランドでの勝利で、2勝目の京都新聞杯(G2)も8番人気のアスクワイルドモアでの勝利。1番人気では2戦2敗、2番人気は5戦5敗、3番人気は11戦11敗と、ファンの期待に応えて勝利という経験には乏しい。

 その点、このタイミングでのイルーシヴパンサーとの出会いは、キャリアの転機となる可能性もある。

 人気を背負うことが確実な中、脚質的には後ろからが濃厚。前走はG1の舞台でも前を捉えきれなかったことが批判の的になったのだから、G3の今回も同じことを繰り返してしまうと、より厳しい状況に晒されるのは明白だ。

 しかし、そんなプレッシャーを跳ねのけて掴む重賞3勝目には、これまでの2つとはまた違った価値がある。それがここ2年苦汁をなめている“因縁の関屋記念”となれば、今後につながる大きな糧となるだろう。

 その末脚で自身の嫌な記憶も、競馬ファンが抱くマイナスイメージも、すべてを払拭することができるか。様々な重圧を背に、岩田望騎手が3度目の関屋記念に挑む。

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