JRA 6年目若手「3頭落馬」の大事故で騎乗停止。豪州遠征から帰国後「絶好調」の裏側で2日連続制裁…“実質”制裁王に浮上
27日に小倉競馬場で行われた7Rの3歳以上1勝クラスは、富田暁騎手の1番人気テイエムファクターが単勝1.5倍に応えての勝利。前走はクビ差の悔しい負けだったが、叩き合いを制して鬱憤を晴らした。
「根性で最後はグイッと出てくれました」
レース後、そう相棒を称えた6年目の若武者・富田騎手が好調だ。2019年に一念発起してオーストラリアへ長期滞在を敢行。本人は「自分が納得するまでとことんやろう」と期限を決めていなかったが、新型コロナウイルスの影響で現地の競馬開催が危ぶまれた結果、2020年の春に約9か月で無念の帰国を果たした経緯がある。
そんな武者修行の成果が表れたのか、帰国した一昨年こそ年間11勝と波に乗れなかったが、昨年は約3倍増となる34勝を挙げる活躍。そして、さらなる飛躍を期した今年はここまで31勝と、早くも昨年の勝ち星をほぼ確実に上回るであろう好結果を残している。
「2019年の8月から豪州遠征に出ていた富田騎手ですが、現地では毎週のようにレースに騎乗することができたそうで、日本でお馴染みのD.レーン騎手とシェアハウスするなど充実した日々を過ごしたそうです。
帰国してからまだ大きなレースの勝ち星はありませんが、先日のアイビスサマーダッシュ(G3)でも2番人気のシンシティに騎乗して2着するなど、あと一歩のところまで来ています。人気馬に騎乗する機会も確実に増えていますし、これから競馬ファンの間でも知名度が上がっていくジョッキーの1人だと思いますね」(競馬記者)
まさに伸び盛りといった富田騎手だが、その一方でやや深刻な問題も抱えているようだ。前出とは異なる記者が言う。
「ここのところ、ちょっと荒い騎乗が目立っているんですよね。騎手として今が将来を左右しかねない大事なシーズンで、結果が求められていることはわかるのですが、もう少し周囲に気を遣った騎乗をしないと……。特に夏になってから制裁が増えている印象でしたが、ついに騎乗停止になってしまいました」(別の記者)
記者が指摘したのは、28日に小倉競馬場で行われた3Rの3歳未勝利戦だ。
「3頭落馬」の大事故で騎乗停止
レディコートアスクに騎乗した富田騎手だったが、最後の直線で内側へ斜行。隣を走っていたクレエンシアが驚いて内へヨレたところ、直後を走っていたティンタルレが接触。大きくバランスを崩すと鞍上の高倉稜騎手が落馬した。
さらにその直後、いきなり転倒したティンタルレを交わし切れずに、今度はキンプウの長岡禎仁騎手とシンハプーラの小沢大仁騎手が巻き込まれる形で落馬。合計3頭が競走中止となる痛ましいレースになってしまった。
レース後、これを受けたJRAからは「最後の直線コースで、4番レディコートアスクが内側に斜行した」とし、富田騎手に9月10日、11日の2日間の騎乗停止処分が下っている。
また、記者が指摘した通り、富田騎手は前日の小倉5Rでも「最後の直線コースで外側に斜行した」と過怠金5万円の処分を受けている。2日続けての斜行、さらに落馬事故の原因となってしまっては、騎乗停止もやむを得ないといったところだろうか。
なお、編集部調べによると7月以降、わずか2カ月で富田騎手が斜行などを理由に制裁を受けたのは、これで6度目。それも7月23日、24日は騎乗停止によって騎乗していないことを考慮すると、ほぼ毎週何らかの制裁を受けていることになる。
「今年のここまでの制裁点ランキングトップ……いわゆる『制裁王』は、4月に保護ベストのクッションを抜くなどの不正改造を行った西谷凜騎手が約3か月間という長期の騎乗停止処分を受けたこともあって断トツですが、今週の競馬でその次に浮上した“実質制裁王”が富田騎手。豪州に長期遠征していた経緯はありますが、騎手6年目でこれはいただけません。結果が出ているだけに、今後はクリーンな騎乗を心掛けてほしいところです」(同)
「自分の気持ちが出てしまってコントロールをおろそかにしてしまった結果なので、しっかり反省します」
これは『netkeiba.com』で2年前に掲載された富田騎手のコラムから抜粋したものである。実は豪州遠征の最終盤で富田騎手は立て続けに騎乗停止処分を受けてしまい、日本帰国後約2か月間騎乗できなかった経緯がある。
勝負事である以上、勝ちに行かなければならないのは当然だが、このような形で出世しても富田騎手としても不本意に違いない。騎乗停止は来週末からだけに、まずは今週末をクリーンな騎乗で終えたいところだ。