首位快走の名伯楽に感じる物足りなさ、完全復活へ必要なラストピース
時が流れるのは早いもので8月も終わり、これで1年の3分の2が過ぎたことになる。これから季節は秋、そして年の瀬へと移ろいでいくが、こうなると気になるのがリーディング争いの行方である。
先週末終了時点で、騎手リーディング首位に立つのは107勝を挙げている川田将雅騎手。2位の横山武史騎手は90勝であるから、その勝ち星の差は17あるためもはや独走状態。順当にいけば、川田騎手の首位の座は年の瀬まで揺るがないと思われる。
一方、調教師リーディングで首位に立つのが現時点で38勝を挙げている池江泰寿調教師。騎手リーディングとは対照的に2位の矢作芳人調教師が37勝と迫る混戦模様ではあるが、しっかりと首位の座をキープしている。
池江師といえば、かつてはオルフェーヴル、サトノダイヤモンドを筆頭に数々の名馬を手掛けた名伯楽。リーディング争いでも常に上位に食い込み、2010年から2017年までは8年連続でトップ5に名を連ねていた。
しかし2017年に63勝を挙げて自身3度目となるリーディングトレーナーを獲得して以降はやや低迷気味。2018年以降は一度もトップ5に食い込めておらず、昨年は36勝の12位で開業3年目の2006年以来となる2桁順位に沈んでしまった。
こうした低迷気味の近年であったが、一転して今年は現時点でリーディング首位の座に返り咲き。ボッケリーニで制した目黒記念(G2)など、今年は重賞も計4勝を挙げる活躍ぶりで、まさに池江厩舎は復活を遂げたといえるだろう。
だがその一方で上半期のG1戦線を振り返ると、池江厩舎の存在感は薄かった印象を受ける。事実、今春のG1には4頭しか送り込めておらず、そのいずれも勝利はおろか掲示板にすら載れていない。
前回リーディングを獲得した2017年にはG1にのべ21頭の馬を送り込み、3つのタイトルを獲得していることを考えても、今年の成績は物足りないように思える。
かつては先述のオルフェーヴルやサトノダイヤモンドに加え、ドリームジャーニー、アルアインなど厩舎の看板を背負ってG1戦線で活躍する馬が常にいた。一方で現在厩舎を引っ張るのはボッケリーニ、ジャンダルム、ヴェルトライゼンデといった重賞タイトルを持つ面々だが、かつての厩舎の看板ホースたちに比べると見劣りしてしまう。
厩舎の期待を一身に背負うダイヤモンドハンズ
確かに今年はリーディング首位と好調で復調傾向にあるが、これまでの栄光を踏まえればG1タイトルなくして“完全復活”とは言えないはず。厩舎としてもG1タイトルを狙うに相応しい、新たなスターホースを待ち望んでいるはずだ。こうした厩舎の期待を一身に背負っているのが、先日デビューしたダイヤモンドハンズである。
ダイヤモンドハンズは現役時に池江厩舎に所属していたサトノダイヤモンドの初年度産駒であり、デビュー以前からPOGなどでも大きな注目を集めていた1頭。6月4日の新馬戦でデビューし、世代の一番星として勝利を挙げたことでも大きな話題を集めた。
そのダイヤモンドハンズは今週末の札幌2歳S(G3)に出走予定。ここでも有力馬の一角とみられており、順調に勝利すれば暮れのG1や今後のクラシックロードに向けても大きな一歩となるだろう。
池江厩舎としてもG1戦線では中々結果が出ていないだけに、ダイヤモンドハンズにかける期待は大きいだろう。父・サトノダイヤモンドのように厩舎の看板を背負って立つに相応しい馬へと成長することを願っているはずだ。
果たしてダイヤモンドハンズと共に池江厩舎は“完全復活”への道を歩むことができるのか。池江厩舎のリーディング争いと共に、名伯楽が育てる次世代のスターの成長にも注目していきたい。