武豊の「お祭り騒ぎ」にJRAも安堵!? 存在感なしの外国人騎手たち…隠れた問題点に「フェアじゃない」という声も

武豊騎手 撮影:Ruriko.I

「30年前は生まれていない人もいるので恥ずかしいですが、すごくうれしいです」

 日本競馬が誇るレジェンド・武豊騎手の優勝で幕を閉じた今年のワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)。新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催となったが、1992年以来30年ぶり2度目の優勝が決まった際はTwitterのトレンドに「武豊」が浮上するなど、概ね大成功だったと言っていいだろう。

 ただ、その一方で現場にいた関係者の間では、いくつかの問題点もあったようだ。

「以前からこの時期の札幌開催には疑問がありましたが、正直、今年はどうなるか心配していました」

 そう話すのは現場にいた記者だ。というのもWASJは以前、ワールドスーパージョッキーズシリーズという名称で12月の阪神で行われていたイベントであり、夏の札幌で開催されるようになった2015年以降、「ちょっと盛り上がりに欠けていた」という。

 単純に大阪にほど近い阪神競馬場と、北海道の札幌競馬場という地理的な問題もあるが、それ以上に毎年のWASJが開催される8月は、欧州や米国の競馬が開催真っ盛り。当然、世界的な名声を持つトップジョッキーの招聘は難しく、夏がシーズンオフの香港や年中開催しているオセアニア地区の騎手の割合が明らかに増えたという。

ネット上の競馬ファンから「誰?」という冷ややかな声も…

「日本のトップジョッキーが世界の騎手と技を競い合うイベントですから、目玉になるような外国人騎手が来ないと、どうしても注目度が低くなってしまいます。今年は2019年以来の久々の開催だったのに、始まる前はほとんど注目されてなくて……。

今年はまだコロナの影響もあって、JRAも外国人騎手の招聘に四苦八苦していたみたいですが、正直『武豊騎手が大活躍してくれたから盛況に終わった』と言っても過言ではないと思います」(前出の記者)

 今年の外国人騎手の中には、すでに短期免許で騎乗していた香港のC.ホー騎手や、かつて日本の天皇賞・春(G1)やNHKマイルC(G1)を勝つなど活躍した豪州のC. ウィリアムズ騎手らの名もあったが、他の外国人騎手に対してはネット上の競馬ファンから「誰?」という冷ややかな声も……。

 初来日の騎手たちについては、唯一の女性騎手だったフランスのC.パコー騎手が美人ジョッキーとして話題に上る程度だった。

「結局、上位3位までをJRAの騎手が独占する結果になったこともあって、WASJに参戦した外国人騎手のレベルを疑問視する声もありましたが、関係者の間では『フェアじゃない』という声も。

というのも、もともと札幌競馬場は小回りで癖のあるコースであることに加えて、今のWASJは開催末期に行われることもあって、芝のレースでは内側の馬場の荒れ具合など、普段から騎乗しているジョッキーが圧倒的に有利。実際に、優勝した武豊騎手も今夏は札幌を拠点にしていましたしね。

以前の阪神の時は開幕週の開催でフラットな馬場でよかったですが、今のWASJはスポット参戦の外国人騎手にとって厳しい環境と言わざるを得ません」(同)

 実際にWASJは今年で第6回を数えたが、JRA騎手が4度の優勝とやはりJRA所属騎手の活躍が目立つ。外国人騎手も2度の優勝があるが、J.モレイラ騎手は事前に短期免許を取得して札幌で騎乗していた。

 ちなみに前身となるワールドスーパージョッキーズシリーズの直近6回では、外国人騎手が4度の優勝。イベントの趣旨としても、世界の名手として招待された外国人騎手が活躍した方が、より盛り上がるのが間違いないだろう。

「難しい状況の中で外国からジョッキーが来てくれましたし、皆で一緒に騎乗して張り合いのある、充実した2日間。札幌の名物になっているので、JRAのジョッキーとして、来年以降も熱いレースを繰り広げられるよう頑張りたいですね」

 優勝した武豊騎手がそう語った通り、WASJが夏競馬の風物詩として定着しつつあることもまた事実。札幌競馬場は一癖あるコースだが、ホー騎手が「天国」と語っていたように、夏でも涼しいという点では日本の暑さの経験がない外国人騎手にとっても、北国の開催は歓迎だろう。

 国民的な知名度を誇る武豊騎手の優勝という、“お祭り騒ぎ”の陰に隠れる形となったWASJの様々な問題点。来年以降も夏の札幌での開催が有力だが、「このまま」ではいつか手詰まりになる恐れがありそうだ。

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