JRA一流騎手の息子2年目19歳が引退危機か。今春「前代未聞のルール違反」で騎乗停止、処分明け1か月も未だレース復帰なし
今週末で夏競馬も終わり、来週からはG1戦線を巡る秋競馬が開幕の時を迎えるなど、再び競馬が熱くなる季節が近づいてきた。
そんな折、6月7日からフランスに長期滞在していた大野拓弥騎手が帰国。約3カ月の武者修行を終え、今週末からさっそく復帰する。また、7月17日の落馬事故で戦線離脱を余儀なくされていた2年目の永野猛蔵騎手も今週から復帰。両騎手とも新潟で騎乗し、土日合わせて10鞍前後の騎乗依頼があるなど、ファンにとっても待望のリスタートとなりそうだ。
その一方、春に競馬界を揺るがした「あのジョッキー」は、今週も復帰レースとはならなかったようだ。
4月23日の騎乗を最後に、未だターフでその姿を確認できないのは西谷凜騎手。永野騎手と同じ2年目19歳の若手ジョッキーだ。
障害のトップジョッキーである西谷誠騎手の息子としてデビューした凜騎手だったが、ルーキーイヤーとなった昨年はわずか4勝。同期のライバルたちが順調に勝利を重ねる中、初勝利はデビュー56戦目と新人8人の中で最後だった。
「前代未聞のルール違反」で騎乗停止
ジョッキーとして非常に厳しい船出となったが、今年4月23日の福島1Rに騎乗した際、騎乗時に装着する保護ベストのクッションを抜いていたことが判明。体重調整に失敗し、保護ベストを軽くすることで帳尻を合わせるという前代未聞のトラブルだった。
事態を重く見たJRAは同日、負担重量に関する注意義務を怠ったとして即刻の騎乗停止処分を発表。後日7月23日まで約3か月間の騎乗停止を決定するなど、「西谷凜騎手」の名は不本意な形で全国の競馬ファンに知られることとなってしまった。
あれから約4か月。騎乗停止処分が解かれてからも、すでに1か月以上が経過している。たが、西谷凜騎手の復帰の報は聞かれない。ネット上の掲示板やSNSなどでも、一部の競馬ファンから「どうしたのか」「どこ行った?」などといった安否を心配する声も上がっている状況だ。
「もう調教には復帰しているんですけどね。なかなかレースとはいかないみたいで……。あれだけのことをやってしまったので、一部の関係者からは騎乗依頼を敬遠する声もありますが、せっかく騎手になったんですし、このまま引退なんてことにならないと良いのですが」(競馬記者)
記者がそう話す通り、体重調整に失敗したという事情があったとはいえ、保護ベストという騎手装具の改造は、公正競馬を脅かしかねない重大な規則違反だ。信頼関係で成り立っている競馬界だけに、1人の人間として信用を置けないという意見もあるが、西谷凜騎手はまだ2年目19歳の少年である。
「実は、西谷凜騎手は1年目から減量で苦しんでいて、デビューからわずか2カ月だった昨年5月にも減量のために脱水症状を起こして、騎乗予定がすべて白紙になったことがあります。
また、今年も2月に体重調整を失敗して、JRAから約1か月間の騎乗停止という重い処分が下っており“保護ベストの一件”は、それから復帰して数週間後でした。過去にも武豊騎手の実弟にあたる武幸四郎騎手(現調教師)などが体重調整で苦しみ、その後に引退を余儀なくされた話は有名ですが、体重が調整できない以上、騎手としてやっていくのは難しいと言わざるを得ません」(別の記者)
実は、父の西谷誠騎手もデビュー当初は平地で騎乗していたが、体重調整が難しくなったことから平地免許を返上して障害専門の騎手へ転身した経緯がある。
「今年は僕が新人賞を、父が障害のリーディングを獲って、2人でJRA賞の授賞式に行きたいです」
昨年のデビュー当初、『netekeiba.com』の取材にそう抱負を語った西谷凜騎手。あれから約1年半、描いていた未来はこんな形ではなかったはずだ。
女性騎手として注目集める古川奈穂騎手や永島まなみ騎手が堂々の活躍を見せれば、松本大輝騎手が今夏に重賞初挑戦を叶え、角田大和騎手は今週末の小倉2歳S(G3)で重賞初制覇を狙う。小沢大仁騎手や今週復帰する永野騎手に至っては、もう重賞でその姿を見るのも珍しくない有望株だ。
デビュー2年目を迎えて次々と若い芽が出始める中、弱肉強食のジョッキー界で19歳が早くも騎手生命の危機を迎えている。果たして、復帰する舞台は平地か障害か、それとも――。