菊花賞の1番人気に名牝の存在…「65年ぶり」珍事とデアリングタクトに意外な接点?
初G1勝ちを決めた坂井瑠星騎手とスタニングローズが、スターズオンアースの牝馬三冠を阻止した秋華賞(G1)も終わり、今週末は牡馬クラシックの最終章となる菊花賞(G1)が開催。G1馬が1頭もいない大混戦にニューヒーローの誕生が期待される。
ただ今年の菊花賞が難解な最大の理由として挙げられるのが、皐月賞(G1)を制したジオグリフや日本ダービー(G1)を制したドウデュースだけでなく、いずれも2着に好走したイクイノックスの姿がないことである。
昨年のエフフォーリアが菊花賞を使わずに天皇賞・秋(G1)を優勝したように、近年はかつてほどクラシック三冠目の長距離戦の出走にこだわらない傾向も強まった。勿論、距離適性などを考慮した上での最終的な判断とも思われるが、一昔前なら後の短距離馬すら迷わず参戦していたビッグレース。長距離軽視の風潮は気になるところだ。
また、春クラシック二冠を連対した馬すら回避した今年の菊花賞は、65年ぶりの珍事となることも各メディアが報じている。天皇賞・春(G1)と同じく、すっかり嫌われ者になってしまった感のある長距離G1だが、昨年の菊花賞馬タイトルホルダーのその後の活躍を思えば、まだまだ存在意義は十分にあると思いたい。
その一方で、この65年ぶりの珍事というワードも気になった。各社が見出しに使っているものの、当時の菊花賞の結果まで伝えているものが見当たらなかったため、個人的に調べてみると意外な馬名が目に入ったのだ。
その馬の名前はミスオンワード。まだグレード制が導入される前、1957年の菊花賞に1番人気で出走して10着に敗れている。察しのいい方は既にお気づきかもしれないが、同馬は無敗で牝馬二冠を達成していたスターホースでもあった。
「65年ぶり」珍事とデアリングタクトの意外な接点?
恥ずかしながら当時の詳しい状況までは把握していないものの、この馬の名前を目にする機会はこれで2度目。1度目は史上初となる無敗の牝馬三冠を達成したデアリングタクトがオークス(G1)を優勝したタイミングだったと記憶している。
当時はまだエリザベス女王杯(G1)の前身となるビクトリアCすら創設されていなかった時代。春に牝馬二冠を制しただけでなく、連闘で日本ダービーにも挑戦(3番人気17着)した名牝が、牡馬に混じって菊花賞を1番人気に支持されたのだから驚きである。G1直行も珍しくなくなった現代では、考えられないような使われ方だろう。
善戦虚しく古馬になってからの大レース勝利に恵まれなかったミスオンワードだが、引退間近の目黒記念・秋(当時)を優勝し、天皇賞・秋(1番人気2着)と有馬記念(1番人気7着)を最後にターフに別れを告げた。
そしてミスオンワードの名前は、同馬のオーナーである樫山純三氏が創業したオンワード樫山(オンワードは冠名)が展開したブランド名としても採用されたことがある。65年の年月が流れた2022年でも、その偉大な足跡は形を変えて名残を残している。