岩田康誠「裏切り」の騎乗停止でチャンス霧散…ソダシ撃破成功も大き過ぎた代償

岩田康誠騎手 撮影:Ruriko.I

 先週末に東京競馬場で行われた天皇賞・秋(G1)は、1番人気に支持されたイクイノックスが優勝。昨年のエフフォーリアに続いて3歳馬の勝利となり、タイトルホルダーを含めた現役最強馬を巡る争いも面白くなりそうだ。

 パンサラッサの大逃げに大きな注目の集まった天皇賞・秋だが、少し後味の悪さが残ったのも確かである。

 出走した全馬が能力を出し切れたレースと言い切れないのは、やはり2コーナーの事象だろう。

 コーナーの入り口で岩田康誠騎手の騎乗していたノースブリッジが内側に斜行したため、松山弘平騎手の騎乗していたマリアエレーナの進路が狭くなってしまった。この件について、岩田康騎手には11月12日(土曜)から13日(日曜)まで、2日間の騎乗停止処分が下された。

 勿論、岩田康騎手も意図的にやったことではないはずだが、ノースブリッジに幅寄せされた格好となったマリアエレーナは、あわや競走中止かというほど大きな不利。ちょうど内ラチが途切れた部分でもあり、明らかにコースから逸れた内側に追いやられ、大きくバランスを崩している。

 レース後に「最初のコーナーで不利がありましたが、最後までしっかり走ってくれました」とコメントを残した松山騎手だが、そのまま直進していたらラチに激突しかねないほどの不利だったように、精神的なダメージのみならず、その後のポジション取りにも影響を受けたといえるだろう。

「裏切り」の騎乗停止でチャンス霧散…

 結果的に加害者となった岩田康騎手だが、マリナエレーナ陣営に迷惑を掛けただけでなく、今回の騎乗停止処分は自身にも痛恨だった。というのも対象期間にあたる11月13日には、エリザベス女王杯(G1)が開催されるため、このレースに出走を予定していたイズジョーノキセキ(牝5、栗東・石坂公一厩舎)への騎乗が出来なくなってしまったからだ。

C.ルメール騎手

 その一方でエリザベス女王杯の鞍上にC.ルメール騎手とのコンビが決定したことは不幸中の幸いか。これには石坂公師も「素晴らしいジョッキーが空いていた」と胸を撫で下ろした。

 ただ、前走の府中牝馬S(G2)でソダシの撃破に成功した立役者は、何といっても岩田康騎手であることも確か。大本命馬を倒したエスコートには、石坂公師も最大級の賛辞を贈ったほどだった。

 そして、ゴール前でガッツポーズを見せた岩田康騎手にとっても、イズジョーノキセキは地方時代からお世話になっているオーナーの所有馬。自身の騎乗停止で乗れなくなった代償はあまりにも大きい。

「やっとここまで、舞台を進めることが出来ました。馬主さんは園田の頃から応援して下さっていて、重賞初制覇と、その期待に応えることができて嬉しいです」

 レース後のコメントでも感謝の気持ちを表していただけに、本番での続投を望んでいたオーナーの期待を裏切る行為だったことは間違いない。イズジョーノキセキの勝利は、岩田康騎手の好騎乗がもたらしたともいえるだけに、ルメール騎手への乗り替わりは、必ずしもプラスと言い切れないかもしれない。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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