今村聖奈も洗礼受けたエージェントの不文律…外国人騎手来日で泣きを見た弱者たち

 天皇賞ウィークから短期免許で騎乗を開始したイギリスのT.マーカンド騎手とH.ドイル騎手の夫妻。先週末の開催を終えて、夫のマーカンド騎手は3勝を挙げ、妻のドイル騎手は未勝利のまま、ブリーダーズC(G1)に騎乗するため、アメリカに渡った。

 短期免許での来日は初めてということもあり、レースでは仕掛けのタイミングが少し早いなど、手探りのところも見受けられたが、2人とも若いだけに適応も早かった。

 ドイル騎手は初白星こそまだだが、女性特有の非力で頼りない感じがなく、道中も馬をしっかり制御して直線も力強く追っていた。惜しい2着も2回あったように、この調子で乗れば近いうちに勝利を挙げられそうだ。

 来日の1週前頃には、騎乗馬があまり集まっていないという話もエージェントから出ていたが、蓋を開けてみれば2人ともそれなりの乗鞍が揃った。C.デムーロ騎手も含め、基本的にノーザンファームが身元を引き受けているため、ノーザンサイドがある程度の馬を用意してくれたということだろう。

 そして来週からは、日本で抜群の知名度や実績のあるR.ムーア騎手とD.レーン騎手がついに登場。2人は関係者の間でも、その手腕を認知されているだけに、引手数多の状況になることが予想される。どちらも騎乗馬の量より質を重視するタイプで、騎乗数自体は多くならないと思われるが、G1の大舞台で有力馬を任されるはずだ。

 その一方で、ここでエージェントに関する疑問も生じる。担当できる騎手の枠は既に一杯のはずなのに、どうするのかということだ。

 ムーア騎手は福永祐一騎手や岩田康誠&望来騎手の親子、今村聖奈騎手を担当している小原靖博氏、レーン騎手は石橋脩騎手、津村明秀騎手、石川裕紀人騎手、横山琉人騎手を担当している森山大地氏がエージェントを務めている。

 しかし、エージェント(騎乗仲介者)は競走に関し、騎手が馬主又は調教師から騎乗依頼を受けるにあたり、騎手本人に代わりその受付を行う者のことであり、1名が担当できる騎手の人数には、制限(3名+若手騎手1名)が設けられている。

 つまり、小原氏も森山氏も4名の枠が埋まっている状態となるため、新たに外国人騎手を担当するには、現在抱えている騎手の誰かを外す必要に迫られる訳だが、そのやり方については少々グレーゾーンといえるかもしれない。

外国人騎手来日で泣きを見た弱者たち…

「小原氏は今村騎手を一時的に外し、森山氏は石川騎手か石橋騎手を一時的に外す方向のようです。こちらについては騎手とエージェントの関係性も絡むので、周りがどうこう言う問題ではないかもしれません。ただ調教師サイドがエージェントに連絡を取ると、今は一時的に担当してないので本人に電話するか、代わりのエージェントに連絡を求められるらしいです。

これまで担当してきた騎手の状況を把握してない訳がないですし、外国人騎手が帰国したタイミングで元に戻るのですから。ルール上は仕方がないこととはいえ、それなら外国人騎手用に1枠は空けておくのが筋だと思います。その辺のモラルはしっかりして欲しいです」(競馬記者)

 煽りを受けて担当から外される騎手の方も正直いい気分ではないだろう。一時的なことだとしても、今後も外国人騎手が来日する度、年に何度か外される可能性がある訳だ。その度に自分が乗っていた馬が、外国人騎手に奪われてしまう。コロナ禍が落ち着き始めたことにより、これからは季節を問わず、より多くの外国人騎手が来日すると見られているだけに、担当から外される頻度は間違いなく増えるはずだ。

 現行のルールだと、力のあるエージェントが騎手を取っ替え引っ替えしたり、成績が落ちた途端にポイ捨てするような事態にもなりかねない。

 そういった不文律を避けるためにも年に手続きは何回までとか、何度も担当を外したり入れたりする場合には、何らかのペナルティを課すなどの対策を検討する必要も出てくるのではないか。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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