ジャパンCより熱い「ダブル豊」の激突、57秒4と鞍上再現の後継者争い勃発か

 12月11日、シャティン競馬場で行われる香港C(G1・芝2000m)。日本からはパンサラッサが参戦を予定しているが、ジャックドール(牡4、栗東・藤岡健一厩舎)も正式に出走を表明した。

 両馬が初めて対決したのは今年8月の札幌記念(G2)。このときは、逃げたパンサラッサをゴール前で競り落としたジャックドールが勝利した。そして2度目の顔合わせとなった天皇賞・秋(G1)は、勝ち馬のイクイノックスに捕まったものの、大逃げを見せたパンサラッサが2着、ジャックドールは4着に敗れていた。

 強気な逃げ先行策を武器としている2頭による3度目の対決は、舞台を香港に移して実現することとなる訳だが、それと同時にサイレンススズカの後継者争いにも発展しそうなのだ。

 事の発端は、16日に更新された武豊騎手の公式サイトの内容である。

 ジュタロウの勝利を喜び、エアロロノアとのコンビが決まったマイルCS(G1)への意気込みを語った武豊騎手だが、最後に「もう一つ、うれしいニュースがあります」と、香港Cでジャックドールの騎乗依頼があったことを報告した。

 かつてサイレンススズカに初めて騎乗した舞台が、この香港Cだったことを思い出したようで、「このご縁をいい形で次に繋げられるような、そんなレースをしたいです」と決意を新たにした様子だ。

 とはいえ、ここで名前の挙がったサイレンススズカが非業の死を遂げた1998年の天皇賞・秋で記録した1000m通過57秒4と同じラップを、今年の同レースで刻んだパンサラッサが「令和のサイレンススズカ」として注目されたことは記憶に新しい。

57秒4と鞍上再現の後継者争い勃発か

 こちらに武豊騎手が騎乗していたら、よりドラマチックだったかもしれないが、奇しくもパンサラッサの主戦を任されている相手は、豊は豊でも「吉田豊」騎手である。大逃げで素質を開花した快速馬に豊という名前の騎手が乗るだけでも出来過ぎた話なのだが、今回はライバルのジャックドールに「本家」の豊が乗ることになり、本人からサイレンススズカを思い出すという言葉が出たのだからややこしい。

 そこで気になるのは、ジャックドールの鞍上に迎えられた武豊騎手が、どのようなマジックを披露してくれるかだろう。

 これまでは逃げるか逃げないかの葛藤もあったジャックドールに対し、徹底的に逃げるスタイルを貫くパンサラッサの存在が、レースプランに影響したことは間違いない。これを武豊騎手が、どういう方法で対処してくるのかは非常に興味深い。

 その一方で、少々気の毒に思えるのが、ジャックドールから無念の降板となった藤岡佑介騎手だ。

 今秋の富士S(G2)をセリフォスとのコンビで勝利したものの、本番のマイルCSではD.レーン騎手へと乗り替わり。それでもジャックドールの存在が心の支えといえそうだったにもかかわらず、今度は武豊騎手に乗り替わり。同馬を管理する藤岡健一調教師は佑介騎手の父でもあり、陣営としても苦渋の決断だったに違いない。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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