「元お手馬」の快勝に武豊と川田将雅も胸中複雑!? 元クラシック候補の争奪戦不可避
20日、阪神メインレースのマイルCS(G1)は3歳馬セリフォスが優勝。富士S(G2)やスワンS(G2)といった前哨戦の勝ち馬は過去10年勝利がなかったが、そんなジンクスをものともせず鋭い伸び脚で初のG1タイトルを掴み取った。
そして、その一つ前に行われた10Rの再度山特別(2勝クラス・芝1800m)でも、かつて「クラシック候補」と呼ばれた3歳馬が主役になった。その名はフィデル(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)。北米最優秀2歳牝馬に選出されたChampagne Roomを姉に持ち、自身は2020年のセレクトセール・1歳馬部門にて2億900万円で取引された良血馬だ。
産まれる前から大きな期待を寄せられていたであろうフィデルは、2歳の7月に小倉競馬場でデビューを迎え、単勝オッズ1.1倍に支持される。レースでもその圧倒的人気に応え、見事に好位からの差し切り勝ちを決めた。
続く京都2歳S(G3)は3着、年末のホープフルS(G1)でも4着と善戦。デビューから3戦続けて川田将雅騎手を確保していたこともあり、ゆくゆくはクラシック路線での活躍が期待されていた。
しかし、年明け初戦の若葉Sは3着に終わり、主戦の川田騎手から「良い頃の走りが中々できない現状です」と厳しい評価が下る。同レースで皐月賞への出走権を獲得できなかったこともあってクラシック挑戦は夢と消えた。
その後は自己条件に矛先を向けていたフィデル。1勝クラスは一発で突破したが、2勝クラス初戦は13着と大敗して迎えたのが今回のレースだった。これまでは先行策を採ることが多かった中、新パートナーのR.ムーア騎手は後方待機を選択。4角で11頭中9番手の位置から馬群の内側に突っ込むと、1頭違う脚で先頭に躍り出て最後まで押し切った。
「フィデルの新味を引き出したレースでしたね。これまでは前目から粘る展開が多く、上がり3ハロンで33秒台の脚を使ったこともありませんでした。
しかし、この日の上がりは33.2秒。同日の阪神開催でセリフォスに次ぐ2位タイの数字をマークしました。昼過ぎまで稍重発表だったように、極端な高速馬場ではありませんでしたが、際立つ決定力を見せてくれましたね」(競馬誌ライター)
「元お手馬」の快勝に二人のジョッキーも胸中複雑!?
そして、このレースを複雑な心境で見ていたかもしれないのが、過去にフィデルの鞍上を務めた二人のジョッキーだ。
「デビューから4戦は川田騎手が、その後の2戦は武豊騎手が騎乗していました。二人ともこの日は阪神競馬場で乗っていながら、フィデルはムーア騎手の手に渡り、二人揃って見学となったわけです。短期免許のムーア騎手が帰国すれば鞍上は白紙になりますし、再び彼らに依頼が来る可能性もあると思います」(同)
武豊騎手も川田騎手も日本を代表するトップジョッキーだ。次にコンビを組むことがあれば、異国の名手によって引き出された新味をどう調理するかも注目したいところだ。
レース後、フィデルを管理する友道調教師は「今日は折り合いをつけて上手く乗ってくれました。いい勝ち方で今後につながると思います」とコメント。鞍上の好騎乗を労いつつ、今後への期待を口にした。いよいよ高額良血馬の本領を発揮し始めたフィデル。これから挑む出世ロードのパートナーに選ばれるのは一体誰になるだろうか。