「鞍上不安」こそ激走のサイン…第2のヴェラアズール狙う特注馬が不気味
先週末に行われたジャパンC(G1)で見事な勝利を飾ったのは、R.ムーア騎手がコンビを組んだ3番人気のヴェラアズールだった。
今年の1月までダートの自己条件を走っていた馬が、芝に転向して5戦目の京都大賞典(G2)を圧勝した勢いそのままにG1初挑戦初優勝の快挙を達成。有馬記念(G1)への出走も視野に入れているだけに、復活を期すエフフォーリアやタイトルホルダーにとっても厄介な相手となるだろう。
そして今週末に中京競馬場で開催されるチャンピオンズC(G1)は、昨年の覇者テーオーケインズで断然という声も多く出ている。だが、前身であるジャパンCダート時代を含む過去22年の歴史で連覇を達成したのは、2010年~11年のトランセンド1頭のみ。前走のJBCクラシック(G1)を快勝した絶対王者は11年ぶりの偉業に挑む。
メンバーを見渡すと上位人気を予想されている馬との勝負付けは大体終わっている感もあり、テーオーケインズが警戒すべきは、まだ底を見せていない新勢力の方かもしれない。
そこでやはり気になるのは、ジャパンCを優勝したヴェラアズールのように、別路線から転向してきた上がり馬だ。グロリアムンディやレッドガランも気になる存在だが、最も勢いを感じるのは充実著しいジュンライトボルト(牡5、栗東・友道康夫厩舎)だろう。
3月から芝に転向したヴェラアズールに対し、こちらはさらに遅い7月下旬のダート転向。休み明けのジュライS(L)こそ2着に敗れたが、ダート2戦目のBSN賞を快勝すると、3戦目のシリウスS(G3)で重賞初勝利を決めた。
このレースの条件は中京のダート1900mで、チャンピオンズCとほぼ同じ。転向後に初重賞勝ちからのG1挑戦という臨戦過程もヴェラアズールを連想させるだけに、不気味な存在といえそうだ。
その一方で2頭の鞍上を比較した場合、世界的な名手のムーア騎手と石川裕紀人騎手の違いは、どうしても気になるところ。G1の舞台で若手騎手にどこまで期待していいものかと不安に感じるファンも少なくないはずだ。
「鞍上不安」こそ激走のサイン…
とはいえ、石川騎手だからこそ狙ってみたくなる強調材料もある。実は、これまで重賞6勝を挙げており、うち4勝は距離が1800m条件のレースなのだ。
自身の初重賞勝ちとなった17年のラジオNIKKEI賞(G3)、19年に2勝目をスプリングS(G2)、3勝目を札幌2歳S(G3)、4勝目を昨年の小倉大賞典(G3)と1800mばかりを4連勝。ここまで続くとこれはもう1800mマスターといっていい。そういう意味では、前走で1900mのシリウスSを快勝したジュンライトボルトが、1800mのチャンピオンズCに出走することは、プラスこそあれマイナスはないはずだ。
そして特筆すべきは、ヴェラアズールはG1初挑戦ながら3番人気だったが、石川騎手ならムーア騎手のように人気しないということだ。ちなみに上記の重賞勝利4レースで1番人気の騎乗は一度もなく、この中には10番人気や11番人気の大穴が含まれている。
外国人騎手のG1連勝の流れで若手騎手の騎乗が不安視された結果、人気の盲点となるようなら、むしろ積極的に狙ってみたい1頭だ。