エピファネイア「谷間の世代」に待った…“順調も物足りない”打破する救世主は現れるか
11日、阪神競馬場で開催される阪神JF(G1)。阪神・芝1600mで行われる2歳牝馬の頂上決戦には、フルゲート18頭に対して29頭がエントリー。有望株の集結に大きな注目が集まっている。
6月からはじまった2歳馬たちの戦い。今年最初の2歳G1を前にここまでのJRA・2歳リーディングサイアー争いを振り返ってみると、収得賞金3億6760万円のエピファネイアが首位を快走中だ。
出走回数・頭数ともに最多ということもあるが、勝利数32と勝利頭数27も全体トップの成績。昨年はディープインパクトの後塵を拝する格好となり、あと一歩届かなかった2歳リーディングサイアーの獲得に向けて順調に歩みを進めている。
今年の2歳馬が4世代目となるエピファネイア産駒だが、これまでの歩みも順調そのもの。第1世代ではデアリングタクトがいきなり牝馬三冠の偉業を成し遂げ、2世代目には牡馬のエフフォーリアが皐月賞(G1)を制覇。さらに秋には天皇賞・秋(G1)と有馬記念(G1)も制し、3歳で年度代表馬にも輝いている。
昨年デビューの第3世代に関しても、サークルオブライフが阪神JFを勝って2歳女王の座を確保。種牡馬デビューから3世代連続でG1馬を輩出してみせ、その功績から2022年度の種付け料は全体トップの1800万円まで高騰した。
アーモンドアイ以降の世代からもエピファネイアは大人気
ディープインパクトやハーツクライといった大種牡馬が一線を退いた今、熾烈な次世代のトップ争いをリードする最有力候補の一頭がエピファネイアであることは疑う余地はない。それを証明するのが、相次ぐ大物牝馬からのラブコールである。
まず大きな話題を呼んだのが、今年1月に誕生したアーモンドアイとの仔。芝のG1で計9勝を挙げた歴史的名牝とのカップリングは、父母合わせて11冠という超有望株。誕生の瞬間から、その将来を嘱望する声があがっている。
その勢いは留まるところを知らず、アーモンドアイ以降の世代からもエピファネイアは大人気。2019年の牝馬三冠を分け合ったグランアレグリアにラヴズオンリーユー、クロノジェネシスといったそうそうたる面々が、エピファネイアとの仔を受胎したことをすでに発表している。
さらに2018年の阪神JFを制したダノンファンタジーや、彼女らと同世代で“最強の2勝馬”として人気を博したカレンブーケドールもエピファネイアを種付けしたことが明かされており、順調に行けば2023年にそれぞれのエピファネイア産駒が誕生することとなる。
夢が大きく広がる種牡馬・エピファネイアの未来。しかし、その中で現状の懸念事項と言えるのが、今年の2歳戦線において有力馬が出て来ていないという点だ。
上述した通り、収得賞金や勝利数ではこの世代を牽引しているエピファネイア産駒なのだが、7月の函館2歳S(G3)を皮切りにここまで計11戦行われた2歳重賞において、勝ち馬の種牡馬の欄に「エピファネイア」の名前はない。
今年の2歳重賞で最も好成績だったのは、新潟2歳S(G3)に出走したウインオーディンの2着。それ以外は馬券内の突入がなく、その成績は【0-1-0-8/9】と苦戦を強いられている。
悲願の2歳リーディングサイアーという勲章が目前に迫っている中、順調に稼いではいるものの、大舞台での存在感がないという部分では物足りなさも感じてしまう。胸を張って王座に就くためにも、残る3つの大舞台で結果を残しておきたいところだろう。
今回の阪神JFには、2戦2勝で秋を休んで2歳女王の座を目指してきたモリアーナ(牝2歳、美浦・武藤善則厩舎)や、前走のサフラン賞(1勝クラス)で好パフォーマンスを見せたサンティーテソーロ(牝2歳、美浦・栗田徹厩舎)がスタンバイ。1戦1勝の登録馬の中にも、2頭のエピファネイア産駒が出走を狙っている。
いずれも『netkeiba.com』の予想オッズでは人気サイドではないが、昨年は父エピファネイアのサークルオブライフが勝利を挙げている舞台。今年の阪神・芝1600mの種牡馬別成績を見ても、エピファネイアの5勝はモーリスと並ぶトップタイであり、得意舞台で想像を超える激走があっても驚けない。
遠くない将来に“大エピファネイア時代”が見えかけているだけに、もし連続G1馬輩出の記録がストップするようなことがあれば、“谷間の世代”のレッテルが貼られてしまう恐れもある。
この苦境を打ち破り、輝かしい未来へバトンをつないでいく新星は現れるのか。11日の阪神JFからはじまる2歳G1戦線は「エピファネイア産駒」に注目だ。