JRA武豊「リーチ」成功もロンはなし! G1級の期待馬がまるで別馬、“タイミングナウ”からまさかの空振り

武豊騎手 撮影:Ruriko.I

 先週末の開催で前人未到のJRA通算4400勝達成を期待されていた武豊騎手。土日の中京で12鞍に騎乗することもあって、その瞬間を心待ちにしていたファンも多かっただろう。

 武豊騎手の公式サイトでも「JRA4400勝の区切りまであと2勝です」「今週のうちにお待たせせずに決めておきたい」と意気込みを表明し、西尾特別(2勝クラス)のロン、東海S(G2)のクリノドラゴンがV候補と期待していた。

 実際、土曜の段階で8Rの4歳以上2勝クラスを5番人気タイミングナウで勝利してリーチ。騎乗馬の名前が“タイミングナウ”だったこともあり、この偶然に気付いた一部のファンからは、「さすが持っている男」「こりゃ時間の問題」「日曜で決めそう」といった声が出るほど、一足早く祝福ムードが漂っていた。

 それもそのはず、何しろ土曜の5鞍に対し日曜は7鞍に騎乗を予定していた武豊騎手。その中に単勝1.5倍の大本命馬ロンが控えていたのだから、それまでに達成できなかったとしても、ここで何とかなるだろうと楽観していたファンも少なくなかったはずだ。

 しかし、「競馬に絶対はない」という格言を証明するかの如く、予想外の結末が待っていたのだから驚くしかない。

「リーチ」成功もロンはなし!

 芝2000mで行われた8頭立てのレース。ハナに立ったロンは、1000m通過62秒1のマイペースで先導する。最後の直線を迎えて後は後続を突き放すだけと思われた矢先、肝心のロンの手応えが怪しい。外から他馬に並び掛けられると、一瞬は差し返す雰囲気を見せたものの、追い比べで遅れを取って3着に敗れてしまった。

 これには「楽なペースで、マイペースで行けました。折り合いも問題無かったです。その割には追ってからが案外でした」と振り返った武豊騎手も首を傾げるしかない内容だ。

 長期休養明けだった前走の甲東特別(2勝クラス)は、2着に惜敗していたとはいえ、「負けたのは残念ですが、長期休養明けでまだ今日が3戦目ですからね。乗り味は抜群です」とコメントしていただけに、「追ってからが案外」という言葉の出た今回の敗戦は深刻かもしれない。

 というのも、西尾特別で後れを取った相手のエイカイステラが、甲東特別で先着していた相手だった上に、ロンから“らしさ”を感じられなかったからだ。

 積極策が持ち味のロンだが、デビューからの2連勝はいずれも自身が上がり3ハロン最速のタイムをマークしていたように一介の逃げ馬ではない。直線で並ばれてから2段ロケットで後続を突き放すレコードで連勝していた。圧巻のパフォーマンスでG1級の期待を寄せられていた馬が、右前脚の屈腱炎を発症して戦列から離れるアクシデントにも見舞われたが、主戦の武豊騎手も復帰を熱望していたはず。

 ところが、西尾特別でロンがマークした上がり3ハロン34秒7は、8頭立ての最下位タイという雲泥の差。これでは武豊騎手が「追ってからが案外」と振り返ったのも分かる話だ。少なくとも復帰2戦の内容は、かつてのロンとはまるで別馬のような凡走だったと言わざるを得ないか。

 また、期待の大きかったロンでまさかの空振りとなってしまったレジェンドだが、メインレースの東海Sでもクリノドラゴンが12着に大敗。浦和記念(G2)で重賞初制覇を飾った勢いを生かしたかったところだが、「壁に当たりましたね。また頑張ります」と気を取り直した。

 終わってみれば、レジェンドの勝利はタイミングナウで挙げた1勝のみ。今週末は「ロン」ではなく「ツモ」に期待したい。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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