イクイノックス完勝だけじゃない、宝塚記念(G1)はC.ルメールの独り勝ち! 「元ルメール」1、2、3着独占が意味するもの
2023年上半期の大一番・宝塚記念(G1)を制し、再び「No.1」を証明したイクイノックス。ファン投票1位はもちろん単勝1.3倍の大本命、さらに今回は初の海外帰りの上に、初の関西遠征。慣れない栗東での調整も重なり、決して楽な条件ではなかったはずだ。
それらを乗り越えての勝利だけに、イクイノックスの前途はさらに明るくなったといえる。
果たして、本馬に勝てる馬は日本……いや、世界にいるのだろうか。秋はジャパンC(G1)を中心にローテーションが編成される見込みで、勝てば賞金とは別に(ドバイシーマクラシック勝利による)200万米ドルのボーナスが出る。今後は世界中のホースマンから、ますます熱い視線を集めることになりそうだ。
一方で、今年の宝塚記念で最も名を上げたのは、世界のイクイノックスにクビ差の2着に迫ったスルーセブンシーズではないだろうか。
一昨年のオークス(G1)9着、秋華賞(G1)11着と挫折を味わった遅咲き。前走の中山牝馬S(G3)で重賞初制覇を飾っていたものの、今回の宝塚記念では10番人気とほぼ無名の存在だった。
しかし、いざレースが始まると、最後の直線で実力馬たちをごぼう抜き。記録した上がり3ハロン34.6秒は、イクイノックスさえ上回るメンバー最速だ。極上の切れを披露したスルーセブンシーズだが、陣営は事前にフランスの凱旋門賞(G1)に登録するなど、その能力を高く評価していた。
また、スルーセブンシーズに足をすくわれる格好となったジャスティンパレスも、距離不安が囁かれる中での3着は上々の結果ではないだろうか。春の天皇賞(G1)を勝った“天皇賞馬”としての格好をつけただけでなく、超一線級の2200mをこなしたことで秋の選択肢に幅ができたはずだ。
では、この宝塚記念で「最も良い結果」を手にしたのは誰なのか。それはもちろんG1・4勝目を挙げたイクイノックス……いや、その鞍上を務めたC.ルメール騎手だ。
「世界一の馬で勝ててよかったです」
まさに“ルメールのルメールによるルメールのための宝塚記念”だった。世界が注目するイクイノックスを無事に勝たせるという重責を果たした上に、これで今年重賞9勝目(G1・2勝)。さらに前日には川田将雅騎手を上回り、リーディングトップという“定位置”に帰ってきた。
それだけでなく、2着スルーセブンシーズ、3着ジャスティンパレスも「前走でルメール騎手」が騎乗していた馬。もし、イクイノックスが敗れていれば“選択ミス”などと揶揄されるところだったが、自ら勝利を飾った上にワン・ツー・スリーなら最高の結果といえるのではないだろうか。
何故なら、今後この2頭も再びルメール騎手が騎乗する公算が大きくなったからだ。
「尾関知人調教師は『可能性として』と言っていますが、スルーセブンシーズは10月の凱旋門賞だけでなく、9月の愛チャンピオンS(G1)にも登録しています。
今回の結果で、今秋の海外遠征が一歩前進したことは間違いないでしょう。出走するにしても、おそらくこのどちらかになると思いますが、2015年にゴールデンホーンがこの2つを連勝しているように、もしかしたら両方ということもあるかもしれません。
ただ、その際の鞍上を日本から選ぶとすれば、国際経験豊富なルメール騎手が濃厚でしょう。当初は同じく凱旋門賞に登録しているサリエラとのコンビと思われていましたが、あちらは1番人気に推された目黒記念(G2)で敗れたこともあって、やや雲行きが怪しい状況。今回のスルーセブンシーズは池添謙一騎手の大胆な後方一気が光りましたが、ルメール騎手が選択肢に入っていると思います」(競馬記者)
実際に、ノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏は、サリエラの凱旋門賞について目黒記念の結果を見て「今後の方針を決める」とコメント。具体的な発表こそないものの賞金加算に失敗した3着という結果をどう受け止めているかは、微妙なところだ。
「ルメール騎手がイクイノックスに騎乗した関係もあって、鮫島克駿騎手と菊花賞(G1)以来のコンビを組んだジャスティンパレスでしたが、結果は2番人気で3着。そこまで悪くない結果だと思いますが、実は鮫島駿騎手が最後の直線入り口でムチを落とすという痛恨のミスがありました。
まともだったら、もう少し前の2頭に迫れていた可能性は当然ありますし、鮫島駿騎手も『勝たないといけないレース。申し訳なかったです』と謝罪のコメント。せっかくのチャンスでしたが、関係者の印象は100点満点とは言えないでしょうね。こちらは秋にイクイノックスと再戦する可能性がありますが、王者不在なら第1候補は天皇賞・春を勝たせたルメール騎手ということになってもおかしくありません」(別の記者)
「アーモンドアイの秋華賞でも同じような競馬をしたので、思い出したね。めちゃくちゃ強い馬です」
かつて、コンビで牝馬三冠などG1・9勝の最多記録を打ち立てたアーモンドアイの名を出すほど、イクイノックスにぞっこんのルメール騎手。今後も当然“イクイノックス・ファースト”は間違いないが、この「勝てる男」の手腕を期待して多くの陣営が列を作っているはずだ。