今の競馬ファンは「ハズレ馬券」を投げ捨てない? 競馬場から姿を消した「敗者の断末魔」と感情のままに宙を舞い続けた「ハズレ馬券」の現在
28日に東京競馬場で開催された競馬の祭典・第84回日本ダービー(G1)。その場にいるだけで汗が噴き出すような猛暑日だったものの、幸い天候にも恵まれ東京競馬場には12万人を超える人々が集まった。
レースの方も2番人気のレイデオロが勝利したことで、管理する藤沢和雄調教師は開業30年目にして悲願のダービー制覇。鞍上のC.ルメール騎手はヴィクトリアマイル、オークスに続く3週連続G1制覇という偉業を成し遂げた。
ただ、大歓声に包まれた最後のクライマックス、スワーヴリチャードを3/4馬身振り切ったレイデオロが先頭でゴール板を駆け抜けた際、ひと際大きな歓声が上がったものの、古くから見られた「お馴染みのシーン」は今一つ迫力に欠けた。
日本ダービーや有馬記念を代表としたG1レースなど、多くの観客が詰めかけたゴール前。最後の決着がついた際、必ず見られていたのが観客スタンド内で「ハズレ馬券が宙を舞う」シーンだ。
純粋にレースを楽しむスポーツであると同時に、ギャンブルでもある競馬。レースが決した際は、まるで勝者を祝福する紙吹雪のようにハズレ馬券が豪快に空中に飛散するのが、古くからの競馬の情景でもあった。それが見たいがために競馬場へ足を運ぶファンがいるほど、勝者と敗者の明暗がくっきりわかれる象徴的なシーンだ。
しかし、今年のダービーのゴールでは、まるで敗者の断末魔を象徴するように宙を舞う”紙吹雪”がほとんど見られなかった。現地で取材を行っていた他の記者に聞いても、同じような答えが返ってきたのだ。一体、なぜだろうか。
1.レース結果が堅かった。
大混戦といわれていた今年の日本ダービーだが、終わってみれば2番人気、3番人気、1番人気の本命サイドで決着。三連単が8番人気、三連複は1番人気だった。ということは当然、的中者、つまりは持参した馬券が的中し、宙に投げる必要がない人が多かったということにもつながる。分母(不的中者)の減少というわけだ。
また、今回のレースは3着がマイスタイルとアドミラブルの際どい写真判定だった。特にアドミラブルは1番人気だったため、レース直後は馬券を捨てるに捨てられなかった人も多くいたのかもしれない。