今の競馬ファンは「ハズレ馬券」を投げ捨てない? 競馬場から姿を消した「敗者の断末魔」と感情のままに宙を舞い続けた「ハズレ馬券」の現在
2.紙の馬券を購入しているファンの減少
昨年よりも減少したとはいえ、28日の東京競馬場には12万人を超える大観衆が集結。ただ、レースを観に現地まで足を運んだものの、実際に東京競馬場の券売機で馬券を買っているファンは年々減少傾向にあるようだ。
特に今回のように人々でごった返す場合は、あえて混雑を避けるためにスマホなどを利用してネット上で馬券の購入を済ませてしまうファンも多い。そうすることで券売機に並んでいる内に締め切り時刻を迎えてしまうという、オールドファンなら誰もが経験した悲しい状況に(あとで「買わなくてよかった」と嬉しい状況になる場合も多々もあるが)遭うことがない。こちらも分母(紙馬券購入者)の減少といえる。
3.良識のある人が増えた
レースが決着し、自分の馬券のハズレを悟った瞬間、感情のままに馬券を空中に放り投げる行為は、競馬の一種の風物詩であるものの、やはり周囲の人々を巻き込む可能性のある迷惑行為であることは確かだ。
今回も女性や家族連れの来場者の姿も多く見られ、今や競馬場はギャンブラーの熱を帯びた”鉄火場”ではなく、立派なレジャー施設といえる。特に世界でも有数の規模を誇る現在の東京競馬場は、外観から美しいことでも有名だ。そういった環境になると、やはり来場者は一定の品位が問われ、単純に迷惑行為の抑制にもつながっているようだ。
特に今の競馬場はゴミ箱がつぶさに設置されており20mも歩けば、たいてい1つや2つは見つかる。清掃スタッフの数も多く、常に清潔な環境を保とうとする競馬場側の努力も関係しているようだ。
良し悪しは別として、まるで火事のように紫煙がもうもうと立ち込める中、日中から浴びるようにビールを飲み、たいした考えも持たずに馬券を買い、感情のままにハズレ馬券をぶちまける一昔前の鉄火場は、今の競馬にはもう見られない光景なのかもしれない。
個人的にやや寂しい感もあるが、紙吹雪のようにハズレ馬券が宙を舞うお馴染みの光景は、そういった旧時代の競馬の断末魔として、時代の波に飲まれながら徐々に消えゆくものなのだろうか。
(文=浅井宗次郎)