競馬界の象徴「武豊誕生」の根底にあった時代の変化……加速する騎手の圧倒的「格差問題」解消に向けJRAが再び推し進める「大改革」
先述した内田騎手と戸崎騎手は、共に地方競馬が最も盛んな大井でリーディングを獲ったこともある実力者。また、現在のJRAリーディングを争っているM.デムーロ騎手やC.ルメール騎手は、JRAの所属騎手となる以前に世界的な実績を上げていた名手である。
そういった中央競馬以外のトップジョッキーがJRAへ移籍して、武豊騎手や福永祐一騎手といった生え抜きのトップジョッキーのさらに上に君臨しているのだから、そこに競馬学校を卒業した若手騎手が割って入るのは、ほぼ不可能に近い状況だ。
ここ20年という長さで見ても、若手といえるのはリーディング4位の田辺裕信騎手と10位の川田将雅騎手程度のものだろう。それでも両者とも10年以上のキャリアを積んでおり、本来なら若手とはいえない存在。
毎年、5名程度の競馬学校を卒業した新人騎手がデビューを果たしているが、20年間現役で活動できる者はほんの一握りとった状況になりつつある。
騎乗依頼を騎手本人に代わって整備するエージェント制度が確立し、昔よりもはるかに結果至上主義となりつつある昨今の競馬界。”勝てる騎手”の需要は高まる一方で、技術的に未熟な若手騎手を育てている余裕はほとんどない。中学を卒業してそのまま競馬学校に入りながらも、20代半ばで騎手を辞めざるを得なくなる若手も決して珍しくないのが現代の競馬界だ。
少なくとも競馬学校が創設された1982年当時は、そんなことはなかった。