社台ファームがノーザンファームにトリプルスコアの惨敗? 馬主の世代交代と関係者の悲喜こもごも~衝撃のセレクトセール総括~
今年春のG1レースにおいても日本ダービーを1着から3着まで独占、さらに安田記念、宝塚記念などのビッグレースを制し、ドバイと香港で海外G1レースを勝利。そしてサトノダイヤモンドは凱旋門賞を目指して調整中と、キタサンブラックを除けば日本競馬はまさしくノーザンファームの生産馬一色といっても過言ではないのである。
そのノーザンファーム(子会社のノーザンレーシングを含む)は今回のセレクトセールで全528頭の約30%にもなる154頭を上場させて150頭が落札。その総額は91億5500万円と全体の52.8%を占めており、5億8000万円で落札された「イルーシヴウェーヴの2017」を筆頭に1億円超えの高額落札馬は全体の31頭に対し22頭とほぼ独占。かつてのライバル社台ファームが104頭の上場で総額38億1600万円、1億円超えは6頭という成績だったことからも、いかにノーザンファームが傑出しているかわかるだろう。
またその影響力は甚大で、社台ファーム以外の他の牧場も大きく割を食った状態といえる。このセレクトセールは多くの馬が売れたが、逆に主取りという売れなかった馬も56頭いるのだが、その56頭の中でノーザンファームは2頭、社台ファームは6頭、残りは他の中小牧場や販売業者。2頭出して一頭も売れなかったクラウン、6頭出して4頭が主取り、1頭が欠場、売れた1頭は900万円の低価格というオリオンファーム。他にも1頭しか上場できず、しかもその1頭が売れなかった牧場なども多い。さらに2日目に登場した今年の新種牡馬キズナ産駒の評価の差が違いすぎて、関係者も困惑したほどだ。
この上場番号478の「エピックラヴの2017」はノーザンファーム生産のキズナ産駒で、最終的に8000万円で落札された。続く上場番号479の「ラストメッセージの2017」は名門千代田牧場の生産馬。かつてダノンプラチナ、ホエールキャプチャなどを生産した名門中の名門といえる牧場であり、この「ラストメッセージの2017」も期待のキズナ産駒であったはずだ。しかしながら同馬は同じ牡馬であるにも関わらず、落札額は6分の1以下の1300万円だった。キズナの種付け料は250万円なので、牧場としては損はないといえるだろうが、ノーザンファームの「エピックラヴの2017」と比較して6分の1以下の評価というのは、適正価格だったといえるのだろうか。この点についてある馬主に話を聞くと
「明らかにノーザンファームブランドへの信頼の高さですよ。昔の生産者は馬を作って売るのが仕事でしたが、今は売った馬を最先端の技術と設備とエサで育成し、競走馬として完成させるまでもが生産者の仕事といっても過言ではありません。その点ノーザンファームの育成技術は他よりも進んでいて、同じディープインパクト産駒にしても明らかに社台ファームより実績があります。加えてノーザンファームのブランドのおかげで、より成績のいい調教師や騎手も手配が可能です。他の生産馬より価格が倍以上になったとしても、それを十分に補えるだけの価値があり、トップの馬主になればなるほどその価値を金銭よりも優先するのでしょう」
と教えてくれた。確かにノーザンファームは世界に誇る牧場施設、育成施設、外厩施設などがあり、また馬を預ける厩舎も手配する騎手も一流どころばかりだ。今はすべてがうまくかみ合っている状態であり、この流れは当分続くことだろう。