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C.ルメールの栄光とM.デムーロの絶望…1番人気の不完全燃焼に調教師も苦言。「中途半端が一番ヤダ」積極性の塊が身上を失った日

M.デムーロ騎手 撮影:Ruriko.I
M.デムーロ騎手 撮影:Ruriko.I

「最も運が良い馬が勝つ」レースで運に見放された男

「ついてなかった――」

 古くから「最も運が良い馬が勝つ」と言われるレースで、この男は運に見放された。2017年の日本ダービー(G1)で1番人気のアドミラブルに騎乗したM.デムーロ騎手である。

 勝負の明暗はバックストレッチ、レース中盤で大きく分かれた。後方にいたC.ルメール騎手のレイデオロが早めの進出を開始すると、一気に2番手まで浮上。そのまま最後まで押し切ってのダービー制覇は、今なおダービー史を彩る神騎乗の1つとして語り継がれている。

 その一方、ルメール騎手のすぐそばにいたはずのデムーロ騎手は動けなかった。レース後「バックストレッチでレイデオロが上がっていって、一緒にいきたかった」と振り返るなど、一瞬「動かなければ」と思ったものの皮肉にも皐月賞(G1)で騎乗していたペルシアンナイトとの絡みなどもあって、動くに動けなかった。

 いや、何よりも慎重になった。早めに仕掛ける積極策はハマれば神騎乗かもしれないが、当然ながらリスクもある。アドミラブルは1番人気。それも栄えある日本ダービーの1番人気である。

 スワーヴリチャードと挑んだ翌年の大阪杯(G1)で、見事な早め進出を見せて優勝したように、デムーロ騎手は元々は積極性が身上のジョッキーだ。その積極策は一部のファンからは「デムーロスペシャル」と愛され、だからこそ3着に終わった日本ダービーのレース後、アドミラブルを管理する音無秀孝調教師も「レイデオロが行ったタイミングで行けばよかった。行ったけど遅かったかな」と苦言を漏らした。

 デムーロ騎手にとっては、忘れたくとも忘れられない日本ダービーだ。

出るか!? コスモキュランダのデムーロスペシャル!

コスモキュランダ 撮影:Ruriko.I
コスモキュランダ 撮影:Ruriko.I

 あれから7年後の3月、皐月賞トライアルの弥生賞ディープインパクト記念(G2)で、これまで1勝クラスさえ勝てなかったコスモキュランダ(牡3歳、美浦・加藤士津八厩舎)の運命が大きく変わった。

 出走11頭中6番人気に甘んじた伏兵は、向正面で後方にいたものの早め進出から一気に2番手へ浮上。そのまま押し切って重賞初制覇、貴重な皐月賞切符を手に入れた。レース後「ペースが遅そうで、後ろでは厳しいと思って早めに動いて行きました」と振り返ったのはデムーロ騎手だ。まさに鞍上の“らしさ”全開の快勝劇だった。

 その後、J.モレイラ騎手とのコンビで皐月賞を2着したコスモキュランダは、デムーロ騎手との再コンビで日本ダービーへ挑む。

 直前の共同会見で加藤士調教師は、コスモキュランダの強みについて「やっぱり自在性がある」と話し「引っ掛かるところがないので、距離が延びるのはこの馬にとってよりプラスになるんじゃないか」と自信を深めている様子だった。

「僕、中途半端な競馬に終わるのが一番ヤダですね」

『netkeiba.com』で今春掲載された『Road to No.1 M.デムーロ世界一になる』にて、そう語っていたデムーロ騎手。もちろん、弥生賞のような“デムーロスペシャル”を見せてくれるのかはわからない。

 ただ、アドミラブルの時のような後悔だけは絶対にしたくないはずだ。

 奇しくもコスモキュランダは2017年の皐月賞馬アルアインの仔であり、皐月賞2着は当時のペルシアンナイトとデムーロ騎手と同じ。そして日本ダービーには2017年のダービー馬レイデオロの産駒も、2着馬スワーヴリチャードの産駒も顔を揃えている。

 様々な運命の糸が複雑に絡み合い、臨界点に達して迎える今年の日本ダービー。7年前の後悔を胸に、アグレッシブさの塊のような男が完全燃焼する舞台は整った。

浅井宗次郎

浅井宗次郎

1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」(敬称略)

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