横山典弘「調教師は諦めた。もうずっと騎手でいく」引退も噂された大ベテランが3度目のダービー優勝!「将来性を断たなくて良かった」の言葉にファンもしみじみ?
26日に東京競馬場で行われた競馬の祭典、第91回日本ダービー(G1)は、馬場のいいインからスルスルと抜け出した9番人気の伏兵ダノンデサイル(牡3、栗東・安田翔伍厩舎)が優勝。無敗の二冠が期待された1番人気ジャスティンミラノは2着。3着に7番人気シンエンペラーの入った3連単の払戻は、22万9910円の波乱となった。
馬最優先主義を貫く56歳のベテランと大一番に向けて万全の状態に仕上げた陣営の努力が実った瞬間だった。
皐月賞断念から掴んだダービー馬の栄冠
クラシック一冠目の皐月賞(G1)では、発走直前に横山典弘騎手が違和感を覚えて無念の競走除外。結果的に右前肢跛行が分かりことなきを得た。オーナーや関係者の想いを背負った晴れの舞台で苦渋の判断となったが、それから1ヶ月後にダービー優勝という最高の結末が待っていた。
これには横山典騎手も「自分の決断が間違っていなかったのだなと。厩舎スタッフとそこから立ち上げて、ああいうことがあっても馬は大事にしていれば応えてくれるというのは、馬に感謝です」と振り返ったように、あくまで馬の状態を優先する陣営による勝利といえるだろう。
その一方で、ジャスティンミラノに騎乗した戸崎圭太騎手のことは、少々気の毒な結果にも思えた。
戸崎騎手は1週前のオークス(G1)を1番人気ステレンボッシュで2着に惜敗したばかり。ダービーでも同じく1番人気に騎乗していただけに本人も期するものがあったはずである。7枠15番の外枠を引いた影響も少なからずあったかもしれないが、勝ち馬に上がり3ハロンのタイムを0秒4も後れを取った上に2馬身差の完敗。今日のところは相手が一枚上だった。
こちらについては仕方がないと思える部分もあるのだが、戸崎騎手にツキがなかったとすれば、ダノンデサイルをエスコートした相手が横山典騎手だったことかもしれない。
というのも、パートナーの能力を余すところなく引き出した熟練の技術、勝負への勘が際立った大ベテランだが、一時は騎手を引退して調教師に転身する噂もあったからだ。
現役続行がもたらした3度目のダービー勝利
2021年夏頃に調教師試験の勉強を始めた横山典騎手。同時期に名前の挙がった田中勝春元騎手(現調教師)は見事合格し、すでに第2の人生をスタートしている。
対する横山典騎手は本人も「まだ全然やれると思っているけど、なんせ依頼がないからな。こればっかりは仕方ない」と未練を残しての受験。不合格だったという噂もあり、「調教師は諦めた。もうずっと騎手でいく」と周囲に漏らしていたように、現役続行を決断した経緯がある。
そして、武豊騎手と同じ道を歩んだ結果、2009年ロジユニヴァース、2014年ワンアンドオンリーに続く3度目の日本ダービーの優勝。もし横山典騎手が試験勉強を続け、調教師になっていたとしたら…おそらくダノンデサイルとの出会いはなかったに違いない。
そう考えた場合、「皐月賞をやめたことでこれからも含めてデサイルの将来性を断たなくて良かったと思います」と振り返った横山典騎手の言葉は感慨深いものがある。なぜなら調教師の道を選ばなかったことで、騎手・横山典弘の将来性も断たれなかったのだから……。
昨年の有馬記念(G1)をドウデュースで制した武豊騎手の54歳9ヶ月10日を更新する56歳3ヶ月4日で、JRA・G1レースにおける最年長記録を更新した横山典騎手。公私ともに仲のいいライバルの偉業は、レジェンドも意識せざるをえないだろう。
PICK UP
Ranking
17:30更新- ルメール軍団「誤算続き」で迷走中?使い分けの弊害に一部ファンから疑問の声
- クロワデュノール「世代最強説」に現実味も…ダービー馬候補が未勝利戦より遅い時計の怪
- 武豊×ドウデュース完全包囲網で波乱含み!?豪華メンバーのジャパンCにチェルヴィニア、ブローザホーン、オーギュストロダンら最強メンバー集結。レジェンド元JRA騎手の見解は?
- 「別競技」の高速馬場で欧州最強マイラーの意地見せたチャリン!ジャパンC参戦オーギュストロダン、ゴリアットに朗報?
- C.ルメール「アンラッキー」な過怠金に謝罪…マイルCSでも「牝馬のC.デムーロ」の手綱冴えるか?
- エアスピネル降板に武豊騎手は「何」を思う……8年前、すべてを手にしてきた天才騎手が”最大級”の屈辱を味わった「ウオッカ事件」とは
- 【京都2歳S(G3)展望】藤田晋オーナーの大物エリキングが登場! ジョバンニ、サラコスティがリベンジに燃える
- 【ジャパンC(G1)展望】「ディープ」オーギュストロダンVS「ハーツ」ドウデュース、2005年有馬記念から19年越しの最終決戦!
- 春のG1戦線に水を差す「醜聞」続く…現役騎手の父に詐欺容疑、G1馬オーナーが逮捕
- 「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
関連記事
横山典弘が日本ダービー勝利よりも喜んだこと。「目に見えない違和感」で栄誉を手放した騎手と、それを支持した調教師が手にしたJRA最高の勲章
蛯名正義、横山典弘が喜びを分かち合った「唯一無二」のオークス同着…アパパネとサンテミリオンが繰り広げた「長過ぎる直線」の攻防【競馬クロニクル 第56回】
C.ルメールが「過怠金」横山典弘が「騎乗停止」に賛否両論!? 覚悟の突撃と不可抗力…JRAの一貫した判断とは
【天皇賞・春】「横山典弘マジック」に翻弄された敗戦の弁?大敗でも爪痕残した名手の存在感…テーオーロイヤル、ディープボンドの好走にヒント
【天皇賞・春】横山典弘「前ポツン」にファンは狂喜乱舞? 20年前の逃亡劇再現あるか……マテンロウレオ陣営も不気味なコメント