「騎乗依頼を受けない」トップジョッキーやベテランも?JRAから来年は4週間の通達済み…「名ばかり」暑熱対策に中堅騎手が不満

 JRAが「競走時間帯の拡大」期間と称した暑熱対策を導入する夏の新潟開催。9時35分から1レースがスタートし、18時25分に最終12レースが行われ、すべてのレースを現場で観戦するには9時間近く暑い新潟で過ごさなければならない。

 後半や最終レースに担当馬が出走する厩務員は、レース後に馬と馬運車で帰路につくため、美浦の場合なら深夜から早朝に帰宅する可能性すらあるという。暑熱対策に関しては騎手の反応も概ね冷ややかであり、トップジョッキーやベテランの中には、「後半のレースで騎乗依頼を受けない騎手もいる」という噂まで出ていたらしい。

名ばかりの暑熱対策に騎手の反応も冷ややか

 物理的に関西在住の関係者は飛行機の時間に間に合わなくなるし、新幹線で帰るにしても少しでも遅延があれば帰れなくなる可能性もある。ただでさえ金曜から調整ルームに入り、昼休みでも3時間半近くも待機させられ、日曜の遅い時間まで拘束されるのでは、嫌がる騎手も少なくないはずである。

 この状況に対し、不満を漏らしていた某中堅騎手からは、「名ばかりの暑熱対策」だと指摘する声もあった。

「今後を見据えるなら、いっそのこと7月末から8月上旬の間は競馬をやらなければいいと思います。時間をズラしたところで、めちゃくちゃ暑いことに変わりはない訳で、暑熱対策といっても名ばかりですよ。そんな小手先だけの対策ではなく、本当に馬のこと、人のことを考えるなら開催をやめるべきです。

その代わり、2場開催の週を減らして3場開催をもっと増やせばいいでしょう。例えば札幌を9月中旬まで延長するとか、春や秋の福島や新潟を1週ずつ増やすのもあり。僕ら中堅や若手は2場開催だと騎乗数が確保できなくて赤字の週もあります。2場開催で喜んでいるジョッキーはほとんどいませんよ」(中堅騎手)

 C.ルメール騎手のように夏休みを自主的に取る騎手もいるが、それは彼がトップジョッキーのため、戻って来ても騎乗馬の確保に苦労しないという背景もあるだろう。その点、中堅や若手は少ないチャンスを手にするために必死。もしJRA側が公式に夏休みを用意してくれるなら、喜ぶ騎手も多いのではないかと話していた。

 また、トレセンからの移動距離も長くなる夏競馬は、想定外のアクシデントに巻き込まれるリスクもある。先日は菱田裕二騎手が函館から小倉への移動で乗る予定だった飛行機が欠航したため、午前中のレースに間に合わないトラブルもあったばかり。

 しかし、JRA側は騎手や調教師に暑熱対策を今年の2週間から増やし、来年は4週間行う予定だと通達しているとのこと。将来的には暑熱対策として行われていた小倉の2週間の休みもやめて開催を行うらしい。

 実は、今年の小倉と中京を入れ替えたことも先を見据えた試みと目されている。移動距離の長い小倉ではなく、中京なら暑熱対策で18時過ぎまでレースを行なっても、栗東まで2時間弱で帰れるからだ。そういう意味では関係者に配慮した時間と経費の計算といえそうだ。

 とはいえ、近年の夏は限界を超えた暑さが続いており、取り返しのつかない事故が起こってからでは遅い。

 先述の某中堅騎手が言っていたように、開催ありきで策を練っているJRAの姿勢に否定的な意見が出てもやむを得ない部分もある。本当の意味で人馬の安全を考えるなら、抜本的な改革が必要なのかもしれない。

GJ 編集部

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