ドウデュース不在の有馬記念が来年の混迷を示唆?ダノンデサイル、アーバンシック敗戦が落とした影
戸崎圭太騎手とレガレイラが見事に勝利した今年の有馬記念(G1)。果敢にハナを奪ったダノンデサイルと横山典弘騎手の先導したレースは、前半1000m通過が62秒8という超スロー。横山和生騎手のベラジオオペラが2番手につけ、G1らしからぬ我慢比べのような展開となった。
G1勝ち実績のある2頭が、まるで勝ってくださいと言わんばかりのマイペースに持ち込んだから、親子でワンツーフィニッシュを決めても不思議ではない流れだっただろう。
だが、それを許さなかったのがいつもより積極的な位置取りで立ち回った戸崎圭太騎手のレガレイラ、8枠16番の大外枠を引く不利がありながら、ペースが緩んだタイミングで先手を打って外からスルスルと進出したC.デムーロ騎手のシャフリヤール。ロスのないコース取りでこれといった不利もなかっただけに、3着ダノンデサイル、4着ベラジオオペラは完敗を喫したと言わざるを得ないか。
ダノンデサイル、アーバンシック敗戦が落とした影
また、勝ったレガレイラにしても戸崎騎手が好騎乗で勝利へ導いたが、春のクラシックで牡馬相手に惜敗しただけなく、牝馬相手のローズS(G2)やエリザベス女王杯(G1)すら勝てなかった馬である。もちろん、敗れたレースで本来の実力を発揮することができなかった点については考慮が必要だが、有馬記念の勝利で文句なしに現役最強馬となったのかといわれると疑問が残る。
やはり残念過ぎるのは秋古馬三冠に王手をかけていたドウデュースが直前に出走を取り消したことだ。
今年のメンバーでは力の抜けた存在であり、多くのファンがラストランを有終の美で飾る武豊騎手とのウイニングランをイメージしたはずだ。本馬にはハーツクライの後継種牡馬としての期待も大きく、その優秀な血を繋いでいく仕事もある。ファンとしての一時の感情よりも苦渋の決断をした陣営の無念は計り知れない。主戦の武豊騎手も張り詰めていた糸が切れたかのように21日、22日の騎乗を病気で取りやめ。レジェンドのモチベーションを支えていた最大のパートナーの引退は大きかったか。
そして意外といっては失礼だが、10番人気シャフリヤールの激走にも驚かされた。ダービーでエフフォーリアを破った古豪は6歳までトップクラスの走りを見せ、世代レベルの高さを証明した。現5歳と6歳はハイレベル世代として近年の競馬を牽引。下の世代のトップクラス相手に高い壁となった。
それだけに次世代から新たなヒーローの登場が待たれるものの、4歳世代はベラジオオペラ1頭が有馬記念に出走して4着、3歳世代にしてもまだまだ群雄割拠の様相を呈している状況。来年の混迷を示唆するような有馬記念の結果だったかもしれない。