JRAが降級制度「廃止」決定……何故馬主の「猛反対」は実らなかったのか? 肥大する「格差問題」を前にオーナーたちが一枚岩になれない事情
1月の報道を含め、すでに多方面で報道されている降級制度の廃止だが、ファンや関係者の間で様々な協議がなされている中、1つだけ確実なことは「競走馬のサイクルが加速する」ということだ。
降級制度があれば、例え4歳夏までに頭打ちになっていた馬でも、降級することで再び活躍できる、つまりは賞金を稼げる可能性があった。だが、降級制度がなくなると事実上、それがまず不可能となる。
また、現行の条件戦は基本的に5着以内に走った馬に次走の優先出走権が与えられる。
逆に述べれば5着以内に入れない頭打ちの馬は、使いたいレースにそうそう使えないということだ。近年の条件戦はもともと弱い馬が、除外のために調子のいい時にレースに出ることができず、結果ますます5着以内に入れなくなるという”負のスパイラル”が問題視されている。
だが降級制度が廃止になると、いよいよ救済措置がなくなる。優先出走権がなく、まともにレースに出られないために出走手当さえ稼げなくなった馬は、維持費を稼げず引退する他なくなるということだ。
つまり降級制度が廃止になることで、競走馬の競走寿命は確実に短くなるだろう。それは1頭の馬で「どれだけ稼げるか」がカギとなる馬主にとっては痛手でしかないということだ。
しかし、こういった状況に陥るのは、すなわち降級制度の廃止が大きく影響するのは、いわゆる「弱者」である。「強者」にとっては降級制度など、むしろ”邪魔”でしかない制度だ。
例えば、今年の安田記念(G1)で2番人気ながら5着に敗れたエアスピネルは、4歳夏の降級で賞金が半分になることで安田記念に出走できない可能性が取り沙汰されていた。そのため、年明け早々の京都金杯(G3)から始動し、安田記念までに3戦を要した経緯がある。