キタサンブラック「坂路3本」追いはどうなった? 今秋、異例のハード調整”消滅”が意味するものは最強馬の「完成」か、それとも……
しかし、今春の集大成となった宝塚記念(G1)では、ファン投票1位並びに単勝1.4倍の圧倒的な支持を受けながらも9着に敗戦。
最後の直線で早々に手応えがなくなりズルズルと後退する姿は、多くの人々にとって受け入れ難いショッキングなものであり、本馬が2015年の日本ダービー以来、ずっと3着以上に好走してきた背景もあってか、レースが行われた阪神競馬場は悲鳴と怒号に包まれた。
その結果、本馬のオーナーである演歌界の大御所・北島三郎の意向で、当初の最大目標とされていた秋の凱旋門賞挑戦が消滅。主戦を務める武豊騎手が心待ちにしていた「夢の挑戦」は、儚く霧散した。
その後も敗因の究明として、メディアを中心に様々な憶測が流れたが、中でも最も有力な1つが「オーバーワーク説」だった。
特に問題視されたのは、歴史的スーパーレコードでの勝利となった天皇賞・春から、宝塚記念に向けての調整過程だ。この時すでに大阪杯、天皇賞・春とG1を2連戦して2連勝。名実ともに現役最強馬の座に君臨していたが、陣営は調整の手を緩めず、さらに異例の坂路3本追いを敢行した。
無論、秋には凱旋門賞挑戦が控えていたこともあり、キタサンブラックにとっての”ゴール”は日本最強ではなかった。陣営が激戦を重ねながらも「鍛える」調整の手を緩めなかった背景には、そういった思いがあったに違いない。
しかし、宝塚記念が行われる数日前に『東京スポーツ』の取材を受けた担当厩務員から「自分からノッていくというか、内面からにじみ出てくるものがないんですよね。こういうことは初めてで……」という声が聞かれると、オーバーワーク説が俄かに囁かれ始める。
さらに宝塚記念惨敗後には、北島オーナーから「この前(天皇賞・春)も多少走っているし、その前(大阪杯)も勝たせてもらって、馬も疲れている。『疲れてる』と俺に言いたかったんじゃないかな」と疲労を示唆するコメントもあって、ネット上を中心に陣営の調整方法を疑問視する声が上がった。