ラビットラン和田竜二騎手とモズカッチャン鮫島一歩調教師の「仁義なき戦い」最終章……「禁断の降板劇」に始まった両者の”確執”の行方は
「まあ、和田クンもああいう強い馬に恵まれて、お互いによかったといいますか」
“因縁の対決”最終章といえる秋華賞(G1)が2日後に迫った13日、この日発売された『競馬最強の法則』(KKベストセラーズ)に掲載されたインタビューで、管理馬のモズカッチャンを送り込む鮫島一歩調教師は、かつての主戦・和田竜二騎手に対してそう語った。
紙面に掲載された口調こそ穏やかだが「切り捨てた側」からすれば、こう述べる他ないだろう。それだけでなく、和田騎手が騎乗したラビットランによって、皮肉なほど見事な逆転負けを喫したローズS(G2)の敗戦は、当然ながら未だ師の胸の奥に残っているはずだ。ネット上では和田騎手の意地や執念に称賛が集まった反面、勝つために非情な乗り替わりを決断して敗れたモズカッチャン陣営には、ひと際大きな批判が集まっていた。
「ソウルスターリングは、負かしたい」
和田騎手が詰めかけたファンの前でそう宣言したのは、今夏7月26日に大井競馬場で行われたトークショーの壇上だった。この春、トライアルのフローラS(G2)を勝って挑んだオークス(G1)での最後の直線。一度はインから抜け出して先頭に立ったモズカッチャンだったが、最後にソウルスターリングの底力にねじ伏せられた。
秋には、そのリベンジを何としてでも果たしたい――。だからこそ「(ダービー馬)レイデオロとソウルスターリングのどちらに乗りたいですか」という質問にあえて、女王へ宣戦布告したのだ。
相手が強いことを承知しながらも、それでもモズカッチャンに自分だけが知る大きな手応えを感じ「逆転できる」と信じていたはずだった。
しかし、一方で鮫島調教師は「このままでは勝てない」と考えていた。インタビューでは「秋に向けて、何かを変えていかなければならない」と当時の心境を語っている。そして、和田騎手がリベンジを誓ったわずか1週間後の8月3日、モズカッチャンにM.デムーロ騎手が騎乗することが報道された。