藤田菜七子騎手がJRA一番乗りで「No.1若手騎手決定戦」予選通過! 16年ぶりに誕生した「アイドル騎手」から「乗れる若手」へ進化した軌跡
そんな中で迎えた2年目だが、序盤の3カ月が終わって、わずか1勝。率直に述べて、このまま”消えて”もまったくおかしくはなかった。競争に敗れ、ゆっくりと衰退していく他の騎手と、何ら変わりのない姿と言えたからだ。
しかし、その一方で彼女は、ただ苦境に耐えているだけではなかった。
積極的に実績のない関西へ遠征し、新たな人脈づくりに奔走していたのだ。これは右も左もわからなかったルーキーシーズンには見られなかった積極性であり、そこで関係を築いたDr.コパこと小林祥晃氏や、メイショウ軍団の総帥・松本好雄氏といった大物馬主は、今なお藤田菜七子騎手の成績を支えている。
また、同時に今の自分が「どうすれば勝てるのか」ということも、貪欲に追究するようになった。その顕著な例が、積極的な新潟遠征だ。ローカル競馬場ならトップ騎手の参戦が少ないことはもちろん、狙いはこの競馬場にしかない直線1000mのレースにあった。
カーブのない直線だけのレースなら、馬が加速する第4コーナーで膨らむことも多い未熟なコーナーリングの技術をカバーできるし、何よりも新人騎手としての軽量がより活きる。実際に藤田菜七子騎手はこの新潟1000mだけで3勝を上げ、新潟競馬場は今年中央で上げた12勝の内、8勝を占めている。
2勝目が4月だったにもかかわらず、今年すでに12勝。勝ち星は確実に増え、今年の8月にはデビュー以来初の「1番人気1着」を達成。今月21日には、ついに1997年に牧原由貴子騎手が記録した11勝を上回り、JRA女性騎手の年間最多勝を20年ぶりに更新した。