【徹底考察】安田記念(G1) サトノアラジン「極上の上がり3ハロン『32.4秒』。しかし、G1級の切れ味には『理由』が存在する」
【血統診断】
ディープインパクト×ストームキャットという配合は、このレースでライバルとなるリアルスティールと同じ。日本ダービーを勝ったキズナやエリザベス女王杯を勝ったラキシス、フランスのイスパーン賞を勝ったエイシンヒカリなど活躍馬は多岐にわたる。
また、この配合の成功例には、母系に重厚なヨーロッパの血が入っている共通項があり、先述した3頭に加え、桜花賞馬のアユサンやリアルスティールも同様の傾向持っている。その上で本馬もまた、母方にニジンスキーの血を持っていることからもディープインパクト×ストームキャットの成功パターンに該当しているといえる。
前走が重賞初制覇となったが、決して奥手の血統構成ではない。どちらかというと、あまり成長力が感じられない血統だが、大事に使われてきたこともあってまだまだ馬は元気なようだ。
≪結論≫
『考察』で述べた通り、上がり3ハロン「32.4秒」の鬼脚を繰り出した前走の京王杯SCのパフォーマンスは、まさにG1レベルと評価していい。ただ、それが賞金加算の都合で本馬が仕上がっていたことと、1400mでの走りであることは頭に入れておきたい。
また、京王杯SCを勝ったことは大きいが、これ自体が当初のプランになかった余計な1走だったため、それが本番にどう影響するのかも注目だ。そのため、京王杯SCの評価には割引が必要だ。単純に過信しすぎないことと、前哨戦を勝つためにピークに近づけざるを得なかった状態が、まだ持続できているのか。馬体重も含めて、パドックでは特に注目しておきたい一頭である。ただ、こういった様々なハードルを越えれば、仮にモーリスが相手でも臆することはないほどの器ではある。
しかし、いくらこの馬が驚異的な末脚を持っていたとしても、位置取りがあまり後ろ過ぎると今まで通りに取りこぼしてしまう可能性も否めない。できることなら、モーリスやリアルスティールといった有力なライバルを意識した競馬はしたいところ。
東京のマイル戦は、この馬にとってベストに近い。晴れて良馬場で迎えられれば、昨秋4着だったマイルCS以上の前進が見込めるかもしれない。
(監修=下田照雄(栗東担当))