「お役所体質は今やお荷物?」日本競馬の海外遠征増加に”背信姿勢”のJRA。今こそ「海外遠征サポート制度」を復活させるべき
「ウチの場合も輸送費、保険代、従業員に掛かる費用もろもろを考えれば、イスパーン賞を勝っただけでは赤字だと思う。G1といっても1着賞金は日本の1000万下(クラス)ぐらいのものだからね」
確かに海外のレースの多くは日本よりも賞金が安く、海外遠征する陣営は目先の賞金よりも夢やロマンを掴みに行く傾向がある。だからこそ、さらに競馬ファンの共感を生んでいる部分もあるだろうが「日本競馬の発展」という意義から考えればJRAは本来、手を貸して然るべき立場にあることは述べるまでもないだろう。
しかし、JRAは一昨年の2014年度の事業計画を発表した際、売り上げ低迷の理由から外国の競走に出走する日本馬に対する補助金、褒賞金交付の廃止しているのだ。
かつてタイキシャトルがフランスのジャックルマロワ賞(G1)を勝った98年には、実際の賞金の7倍に相当する約1億6,800万円もの褒賞金が支給された過去もある。だが、そこから売り上げ低迷を理由に引き下げが続き、ついには完全消滅が決定したのだ。
確かにJRAの馬券売り上げは回復傾向にあるとはいえ、バブル絶頂期のピーク時に比べればまだまだ物足りない。従って、今のJRAにかつての褒賞金を出せというのは道理が通らない部分もあるだろう。
ただ、今年はこれだけ多くの陣営が世界に挑戦しているのだから、せめて「最大で1000万円となる遠征費の補助金支給」だけは復活できないものだろうか。
これは日本馬が海外に遠征する際、その遠征馬がG1ホースであった場合に最大1000万円の遠征費補助金が支給される制度だ。もし仮にこれが復活していれば昨年末に香港C(G1)を勝利しているエイシンヒカリのイスパーン賞にも適用され、陣営は赤字を免れることができたはずだ。
遠征費補助の復活を推す理由は他にもある。
それはこの秋から、凱旋門賞を始めとする海外の主要レースにおける国内での馬券発売が開始されることが概ね決定となり、その収益の一切を管理するのがJRAだからだ。
一昨年に海外遠征におけるこれらの補助制度が廃止された際、「世界挑戦の熱が冷める」という批判があった。
ただ一方で、目玉となるスターホースが売り上げに繋がらない海外に遠征してしまうことから、G1を始めとした「主要なレースの売り上げに悪影響が出ている以上は仕方ない」といったJRAを擁護する声もあったのも事実だ。
しかし、海外の主要レースでも馬券発売が可能になるであろう今年、JRAにとってスターホースの海外遠征におけるデメリットはほぼ消滅した。いや、むしろ海外の主要レースに日本馬が出走した方が売り上げに繋がる状況が築かれるはずだ。
だからこそ、今こそ最大で1000万円となる遠征費の補助金支給だけでも復活し、再び日本馬の海外遠征の背中を押してやることが、日本競馬を牽引するJRAの役目ではないだろうか。