武豊の実績さえ霞む「鉄人」的場文男。すべてを掴んだ大井の帝王が「オレが乗らなければ……」と自虐する因縁レースとは
武豊騎手が「悲願」と言った日本ダービーの初制覇でさえ、挑むこと10回目での勝利だったが、的場騎手の東京ダービーへの挑戦は今年で35回目。2着は実に9回である。
「9度目の2着」を記録した昨年の東京ダービーのレース後、的場騎手は「また2着だよ」と悔しそうに繰り返していた。
それも勝った馬は的場騎手が騎乗していた馬と同厩で、調教師も騎乗を薦めていたこともあったらしい。最後には2着に敗れた騎乗馬に申し訳ない気持ちから「オレが乗らなければ……」と呻くように自責の念を絞り出していた。
ここまで悲観的になるのも無理はない。
これまで南関東クラシック1冠目となる羽田盃を圧勝しながらも、わずか1か月後の東京ダービーまでに故障してしまった馬が2頭。「三冠確実」といわれ羽田盃で単勝1.0倍(元返し)に推された馬が、そのレースで故障……。
さらには東京ダービーまで無敗の快進撃を続け、当日も単勝1.1倍の大本命に推された馬が信じられないような大出遅れを喫し惨敗するという、東京ダービーと的場騎手との間には、これ以上なく苦い数々の歴史があるのだ。
「これは人生の宿題。死ぬまでできないかもしれないけど……」
昨年の東京ダービーのレース後、報道陣に囲まれた的場騎手が悔しさを絞り出すようにコメントしている姿が印象的だった。
武豊騎手は日本ダービーの初制覇に10回掛かったが、初制覇後はこれまでのうっぷんを晴らすように通算5勝。今では歴代史上最多のダービー勝利を誇っている。
ならば実に34回の”うっぷん”が溜まっている的場騎手が東京ダービーを制したのち、いったいどれほどの”大爆発”が待っているのか……ぜひとも見てみたいものである。
的場騎手は今年、2歳王者のアンサンブルライフと35回目の東京ダービーに挑むことが決まっているが、果たして悲願達成なるだろうか。