高知競馬10年間で「売上10倍」の快挙! かつてハルウララ騎乗の武豊騎手が「悲惨」と憂いた競馬場が「時代の風」に乗る
まさに、一寸先は闇。高知競馬の”再生”は組合のなりふり構わぬ運営努力が呼び込んだものに他ならないが、やはりJRAが重い腰を上げたことが何よりも大きい。
規模が大きく異なるとはいえ、「中央」と称されるJRAにとって地方競馬は同業の商売敵、「日本の競馬を支える」という大義名分以外、地方競馬に手を差し伸べる主たる理由はない。それでも馬券購入システムの共有が実現したのは、地方競馬の相次ぐ廃止を問題視した国そのものが競馬法を改正するなど、動きを見せたからである。
その甲斐もあって、現在は全国的にJRAを上回る成長を見せている地方競馬。まさに長い冬の時代を超えて春を迎えた状況だが、その一方で惜しまれるのは、やはり再生の道半ばで力尽きてしまった多くの地方競馬場だ。
特に2011年に廃止となった熊本県の荒尾競馬場や、同じく2013年に廃止した広島の福山競馬場などは、地方競馬に”追い風”が吹き始めた頃の撤退とあって「なんとかならなかったか」という思いは強い。無論、どこの競馬場も足掻きに足掻いた末の結末だけに、無念の至りと述べる他ないのだが……。
しかし、だからこそ不況の波を越えて生き残った地方競馬場は逞しく、奢りもない。
特に高知競馬は、一度”仮死”に至った2008年は年間売上が38億8000万円まで落ち込んでいた。だが、今やその約10倍にあたる360億円超え。そこには高知県競馬組合の方々の尽力はもちろん、馬券を購入するファンを含めた「全国の競馬を愛する者たち」の思いや底力が宿っているに違いない。
微力ながら筆者もその中の1人として、益々の盛り上がりを祈るばかりだ。
(文=浅井宗次郎)