何故、ドゥラメンテはファン投票6位に甘んじたのか。王者だからこそ課せられる『期待』とその『反動』。分水嶺の決戦を迎えた「日本競馬の総大将」の”謎”を紐解く
そして、人々の関心は直後に正式発表されたドゥラメンテのドバイ遠征に大きく傾いた。さらにその時発表された国際レーティングで「ドゥラメンテが世界1位タイ」という評価を受けたことで、人々の期待に大きく拍車が掛かった。
『今回の中山記念は仕方ない。だが、今回のドバイシーマクラシックでこそ、日本の総大将ドゥラメンテが日本競馬の強さを世界に知らしめてくれるはずだ――』
マスコミ各社の報道も手伝って、今年のドバイシーマクラシックはすでにドゥラメンテの「一強」状態。日本国内では「勝って当然」という雰囲気で、国際レーティングでドゥラメンテと互角の評価を受けていたポストポンドでさえ、半ば眼中にないような状況だった。
だからこそ、ドゥラメンテがポストポンドに2馬身差で完敗を喫した際でも、多くのファンが「このポストポンドって誰?」という状況だった。
ポストポンドに関しては後日の報道によって世界でも強い馬であることが認識され、同時にドゥラメンテ敗戦の”逃げ道”は、落鉄というファンにとって不明瞭なものとなってしまった。
つまり、この瞬間からドゥラメンテという馬の能力は”期待と不安”という目に見えにくいベールに包まれてしまった。無敵のドゥラメンテは、完全に幻と化してしまった。
『競走馬は蹄鉄が外れると、どの程度不利になるのか』
近代競馬が始まって150年以上経ち、蹄鉄を履いた競走馬による幾万回のレースが重ねられてきて、ようやく最近、こんな議論が持ち上がるようになった。
無論、仕方がなかったことは疑いのない事実だが、それでも日本国民が期待を背負ったレースで、落鉄を言い訳にしてしまったドゥラメンテ陣営の過失は重い。
何故なら、繰り返しになるが落鉄はファンにとって極めて不明瞭な敗因であり、また、これまでの競馬史で、すでに何万頭単位の馬が落鉄して敗れているにも関わらず、今日までこれほど大きく取り上げられることがなかったからだ。
さらに今年の日本ダービーでも2着馬のサトノダイヤモンドが、落鉄があったことを敗因に挙げ、再び落鉄が大きくクローズアップされる。無論、落鉄自体は仕方のないことであり、それが敗因になること自体に大きな間違いはない。だが、”時期”が悪かった。
昨年引退した藤田伸二元騎手の「負けて批判されたくなかったら落鉄したと言えばいい」という発言が、事態のすべてを集約しているように思えた。
そして、迎えた宝塚記念のファン投票。ファンはドゥラメンテに”審判”を与えた。絶対王者の名は「6位」という屈辱的な結果に沈んだ。