JRA栗田博憲調教師「今思い返しても胸くそ悪い」。名伯楽の”心残り”……波紋を呼んだ「年度代表馬」論争から26年
「ビワハヤヒデは菊花賞を勝っただけでなく、皐月賞や日本ダービー、そして有馬記念(すべてG1)でも2着するなど、年間を通じて活躍したことが評価されました。
また、近年でこそモーリスやロードカナロアが年度代表馬に輝いていますが、当時はクラシックを中心とした中長距離路線が『王道』とみられる傾向が強く、短距離馬はどうしても軽視されがちでした。
当時の投票ではビワハヤヒデが87票(50.8%)で、ヤマニンゼファーは56票に留まりましたが、時代が時代ならヤマニンゼファーが年度代表馬になっていてもおかしくなかったかもしれません」(競馬記者)
実際に2008年にはウオッカが、ヤマニンゼファーと同じ安田記念と天皇賞・秋を勝って年度代表馬に選出されている。
同年にはNHKマイルC(G1)と日本ダービーを制したディープスカイもいたが、投票では180票対37票と圧倒的な差をつけての受賞だっただけに、栗田調教師の思いもひとしおに違いない。
「ビワハヤヒデとヤマニンゼファーの年度代表馬論争があった6年後の1999年にもスペシャルウィークとエルコンドルパサーとの間で、大きな議論がありました。
最初の投票ではスペシャルウィークが選ばれていたにもかかわらず、獲得投票数が過半数に達しなかったために再投票。その結果、逆転でエルコンドルパサーが年度代表馬に選ばれた経緯があります」(同)
当時スペシャルウィークを管理していた白井寿昭元調教師も「(凱旋門賞で)あの馬を負かしたモンジューが日本に来て、それをスペシャルウィークが負かした。なのに、どうしてスペシャルウィークを下に見る? “日本の競馬は欧州の競馬よりも下ですよ”と言ってるようなもんじゃないか」と疑問を露にしている。
年度代表馬を始めとしたJRA賞は記者投票によって選ばれているが、昨年もブラストワンピースとルヴァンスレーヴによる最優秀3歳牡馬を巡ってファンの間で論争が起きるなど、毎年のように何らかの疑問が生まれている状況だ。
「あれ(ヤマニンゼファーが年度代表馬に選ばれなかった)は、今思い返しても胸くそ悪い。まあ、誰が評価するかということだから」
惜しくも”大魚”を取り逃がしたヤマニンゼファーが引退してから26年。その無念は定年を迎えた今なお、名伯楽の胸の内で消えていないようだ。