春の名物重賞・大阪杯が「G1」に! レベル保持は容易も、「価値の明確化」なくしてドバイに勝てず?
大阪杯は、ハイレベルであることは誰もが認めるところだが、やはりこれまで「ステップレース」として扱われてきたレース。G1化することによって京都記念や中山記念を同レースの”ステップ”とする陣営も増えるだろうが、前年のジャパンカップや有馬記念という中長距離レースでも好走した、いわゆる「超一線級の中距離馬」は、やはり大阪杯を「休養明けの年初戦」と位置づけ、その後の香港競馬や天皇賞、宝塚記念のステップとする可能性も十分にあるだろう。そもそもそれだけの強豪なら、同時期に行われるドバイ遠征の招待を受け、ドバイターフやドバイSCを狙う可能性も十分にある。
春のドバイは輸送費など遠征にかかる費用がすべて「主催者持ち」という待遇を受けられ、賞金は2、3着でも日本のG1レース以上。陣営やオーナーにとってはメリットとチャンスづくしだ。現状1着賞金6700万円(上昇するだろうが)の大阪杯と比較すれば、最強クラスの強豪を持つ陣営の選択は大きく揺れるに違いない。秋にも凱旋門賞など欧州競馬があるが、天皇賞・秋やジャパンカップは賞金も格式も高いため、相当の実力馬でも国内専念を選択する方がポピュラーである。
とはいえ、遠征による疲れや後のダメージを鑑みれば、国内でG1の称号を得る選択を取る可能性もあり、リスクを取らない一手として大阪杯に意義はあるだろう。ただ、「ダートG1を増やすべきだからフェブラリーS」「春の短距離G1を作るべきだから高松宮記念」というほどの「目的の明確さ」「分かりやすさ」が、今回の大阪杯にはないのも事実である。
超一線級の古馬が国内に残るだけの賞金を用意できるか、もしくは「春の古馬中距離決戦」大阪杯の価値を押し上げる何がしかの方策を取るのか……春の路線が分散されやすい現状、同レースの価値の明確化が急務である。
ただ、もしこのG1化が成功すれば、日本競馬の楽しみや距離適性の限られた競走馬の活躍の幅は広がることとなる。是非とも「春古馬三冠」を確立してほしいものだ。
(文=きゅーしょにす斗)