JRAクリスタルブラック「初物」づくしの京成杯快勝! そして論議を呼ぶ「皐月賞直行」のローテーションはどう出るか?
19日(日)に中山競馬場で開催された京成杯(G3)は、前評判の高かったスカイグルーヴが1番人気に推されるも、勝ったのは7番人気のクリスタルブラック(牡3、美浦・高橋文雅厩舎)だった。
レースは出遅れ気味にスタートし、馬群の中では折り合いすら欠く始末。離れた後方2番手を追走し、誰もが「これはダメだろう」と思う展開だった。
直線に入り、先行勢が総崩れの中スカイグルーヴが先頭に立ち、そのまま押し切るかと思いきや、外に出したクリスタルブラックが一気に捲ってきて差し切り、半馬身差を付けて優勝した。内容自体は褒められたレースではなかったが、非常に強い勝ち方をしたと言える。
このクリスタルブラックの京成杯勝利にはいろいろとおまけが付いている。
まず、生産者の大狩部牧場は初の生産馬重賞制覇となった。次に所属している高橋文雅厩舎も初重賞制覇。さらに、馬主の岡田勇氏も初重賞制覇。ジョッキーの吉田豊騎手は実に3年ぶりとなる重賞制覇となり、メモリアル満載の1勝となったのだ。
母のアッシュケークは現役時代1200m戦を1勝したのみ。産駒にも近親にも活躍馬がいない中で、クリスタルブラックは2戦目にして重賞を勝ってしまった。父・キズナの強さとも言えるだろうか。
このクリスタルブラック。次戦について、高橋調教師の「体は緩いし、まだあの競馬しかできないと思う。一度、ガスを抜くために放牧に出して、ストレートに行った方がいいのかな」というコメントがあり、皐月賞(G1)直行を匂わせたことで話題を呼んでいる。
皐月賞直行はホープフルS(G1)を勝ったコントレイルも表明しており、こちらは昨年のサートゥルナーリアと同じローテーションを歩むことになる。
2016年にはレイデオロが同じローテーションを歩んでいる。ただし、サートゥルナーリアと違って、こちらは皐月賞を5着した代わりに日本ダービー(G1)を制覇している。
レイデオロとサートゥルナーリアの共通項は「生産者がノーザンファーム」という点。
知っての通り、ノーザンファームは優れた外厩施設を持っており、レース間隔が数カ月空いても、外厩でしっかりトレーニングしてから厩舎に戻すことができる。だからこそ、従来のように皐月賞へ向かうのに一叩きして、というステップを踏まずとも直行してまともなレースができるわけだ。
コントレイルはノーザンファームではなく、ノースヒルズの生産馬だ。しかし、ノースヒルズも「大山ヒルズ」という外厩施設を持っており、ノーザンファームと同様に外厩でトレーニングできるため、間隔を空けて使っても問題なく実力を発揮できる。
その点、クリスタルブラックの場合は生産者が小規模な牧場のため、当然外厩施設などはなく、高橋調教師が語っているように「放牧」してリラックスさせることになる。となると、放牧から厩舎に戻ってきたときには、トレセンで一から調教する必要があり、外厩でトレーニングを積んで、厩舎に戻るころにはある程度仕上がっている馬とは明らかな差が出る。