凱旋門賞の記憶~2006年ディープインパクト~ 世紀の名馬の敗退は常に「風邪」が理由だった? 失格の「裏側」にある真実とは
2005年に無敗で三冠を制し、有馬記念は2着となるも翌年は天皇賞(春)、宝塚記念を圧勝。日本最強馬といわれたディープインパクトが凱旋門賞挑戦を決めたのは天皇賞(春)を制した直後。この挑戦に日本中の競馬ファンが興奮した。凱旋門賞はこれまで1999年のエルコンドルパサーによる2着が最高成績。過去にマンハッタンカフェ、タップダンスシチーなどの実力馬が敗退したが、その2頭と比較しても圧倒的実績を誇るディープインパクトに日本中の競馬ファン、そして競馬関係者が期待したのも当然だった。
ディープインパクトはノーザンファームの生産馬で、2002年のセレクトセールに14頭いたサンデーサイレンス産駒の一頭として上場。落札価格はその14頭で下から5番目の7000万円と決して高い評価ではなかった。しかし、デビュー後は無敗で三冠を制するなどその強さは圧巻。古馬になっても阪神大賞典~天皇賞(春)~宝塚記念を連勝とまさに国内にライバルはいない一強状態であった。
この2006年の第85回凱旋門賞は、前年の凱旋門賞優勝馬で欧州年度代表馬でもあるハリケーンラン、ブリーダーズカップターフ優勝馬シロッコ、パリ大賞典の勝ち馬レイルリンク、サンクルー大賞を勝ったプライドらハイレベルなメンバーが出走したが、出走頭数は8頭と少なかった。日本人による応援馬券もあってかディープインパクトは最終的に断然の1番人気に。日本中がディープインパクトの勝利を期待し、当日は深夜にも関わらずNHKが海外競馬を生放送するという特別番組を編成。そして日本から多くのファンや競馬関係者約5000人がフランスのロンシャン競馬場に押し寄せた。
レースは好スタートを決めたディープインパクトがいつもの後方待機ではなく先行するという意外な展開となった。そして、直線に向いて残り300mでディープインパクトは先頭に立つ。しかし、そこからいつものような豪脚を見せることはできず、後方から伸びた人気薄の3歳牝馬レイルリンク、さらに人気薄のプライドに差され3着というまさかの結果となった。ディープインパクト効果はすさまじく、凱旋門賞の馬券売上は過去最高を記録。NHKでの視聴率は深夜にも関わらず関西で28.5%(ビデオリサーチ社調べ)、関東で22.6%を記録するなどまさに歴史的なものであったが、勝利を手にすることはできなかった
帰国後のディープインパクトは年内での引退、そして種牡馬入りが発表されたが、凱旋門賞のレース後に実施された理化学検査でフランス競馬における禁止薬物イプラトロピウムが検出され、「凱旋門賞3着→失格」という予想もできない結末となってしまった。