JRAダービー卿CT(G3)「7歳にしてさらなる進化」新たな武器を手に入れたストーミーシーに妙味あり
なかでも注目したいのは今年7歳となったストーミーシー(牡7歳、美浦・斎藤誠厩舎)だ。同馬はこれまで重賞では勝利がなかった。中山開催の重賞でも18年のダービー卿CTを3着、京成杯AH(G3)を18年に7着、昨年は6着と勝利には手が届いていない。
だが、これまで敗れた重賞はすべて後方からの競馬で、鋭い末脚を繰り出しても前に届かなかったレースも多かった。後ろからの競馬では、展開に左右されることも多く、直線でも外を回すため、距離のロスが勝ち切れないことの原因ともなっていた。
善戦はしても後ろから届かない、そんなストーミーシーがこれまでのイメージを一変させたのは、前走の東風S(L)だった。このレースで初コンビとなった横山武史騎手は、これまでの後方待機策から一転して先行策を選択したのである。
この突然の脚質転換にも7歳馬は見事に応えてみせた。逃げたファストアプローチ、ミュゼエイリアン、外からショウナンライズが続き、果敢に先行したストーミーシーは内目の3番手という絶好の位置で追走した。
そして、勝負どころとなった直線入り口ではコーナーワークの差で先頭に立ち、追いすがるアストラエンブレムの追撃を半馬身退けた。これまで後ろから外を回していたストーミーシーにとって、内を先行して最短距離で回ってくるというかつてとは正反対の競馬だった。この勝利は同馬の新たな可能性を感じさせるレース内容でもあった。
大胆な脚質転換で思い出されるのは、それまで後方からの競馬をしていたカンパニーを、横山典弘騎手が先行させて勝利した2008年の中山記念(G2)だ。
奇しくもストーミーシーに騎乗していたのは、横山典騎手の三男である武史騎手だったというのも親子2代の「横山マジック」炸裂といったところだろうか。
レース後に横山武騎手は「きょうは内枠だったので、ある程度前の位置で強気に出していきました。いい競馬ができました。重賞でもやれる能力を持っています」と、次走に向けての手応えをつかんだコメントを残した。
1週前追い切りは坂路を単走馬なりで追われ、4F54秒8-1F12秒8。軽く流した程度でも馬体の張り、毛ヅヤも良好で今回もいい状態で臨めそうだ。
管理する斎藤誠調教師は「前走はこれまでとは違う競馬で、幅の広がる走りを見せてくれた。変わらずいい状態だよ」と期待は大きい。
7歳にして先行策という新たな武器を手に入れたニュー・ストーミーシーの走りに大いに注目したい。