JRAデアリングタクト無敗の三冠に「黄色信号」!? 「ダービー参戦」先輩ミスオンワードが63年前に歩んだ末路とは……
24日、東京競馬場で牝馬クラシック第2戦・オークス(G1)が行われデアリングタクト(牝3歳、栗東・杉山晴紀厩舎)が優勝した。
無敗のオークス馬は史上6頭目、デビューから4戦目でのオークス制覇はカワカミプリンセス、ラヴズオンリーユーと並んでキャリア最少タイの記録。さらに無敗の2冠達成はミスオンワード以来「63年ぶり」の快挙で、記録づくめの勝利となった。
デアリングタクトの次走は秋華賞(G1)を目標にしており、近日中に放牧に出される予定となっている。アーモンドアイ、ジェンティルドンナといった名牝ですら達成することができなかった偉業を成し遂げたデアリングタクトには、史上初の無敗の牝馬3冠達成が期待される。
ここで気になるのが、63年前に無敗の牝馬2冠を達成したミスオンワードのオークス後に歩んだ道のりだろう。
持ち込み馬として日本に輸入されたミスオンワードは、3歳(現2歳)の10月に京都でデビュー戦を迎える。初陣を飾ると、その後も牡馬相手に連勝を重ねて4戦4勝で3歳シーズンを終え、最優秀3歳牝馬に選出された。
年明け3月の4歳(現3歳)始動戦も勝利すると、桜花賞では単勝支持率75.4%という圧倒的な人気を集める。見事人気に応え、2着に1馬身3/4差をつける勝利で無敗の桜花賞馬となった。その後、ステップレースを勝利してオークスに挑み、ここでも危なげない走りで快勝して無傷の「8連勝」で2冠達成となった。
ミスオンワードはオークスの時点で、デアリングタクトの倍のレース数をこなして、すべて勝利しているのだ。時代背景、レースの違いもあり単純比較はできないが、現役最強馬アーモンドアイですら最高連勝記録は「7」ということを考えれば、当時のミスオンワードがいかに最強牝馬だったか理解できるだろう。
無敗の2冠馬となったミスオンワードだが、次走に選んだレースはなんと日本ダービーだった。圧倒的な強さからファンや関係者の間でダービー参戦を熱望する声が上がり、陣営は難色を示すも世論に押し切られる格好となり、「連闘」でダービー参戦となったのだ。
その日本ダービーでは3番人気に支持されるも、17着に敗れて無敗記録はストップしてしまった。
当時、牝馬のレース体系が整備されていなかったことから、ミスオンワードは秋の目標を菊花賞に定める。前哨戦の神戸盃(現・神戸新聞杯)を優勝するも、本番では10着に大敗。その後、現在の重賞にあたるレースでは1年以上も勝ちきることができなかった。
だが、5歳(現4歳)時にキャリア26戦目となる目黒記念を勝利、続く天皇賞・秋で2着と復調の気配を見せる。そして同年の有馬記念の7着を最後に、通算成績28戦14勝で現役生活に幕を閉じた。
ミスオンワードの時代には秋華賞もなければ、エリザベス女王杯もヴィクトリアマイルもない。そのため、秋以降は一線級の牡馬相手の戦いとなり、思うような結果を残すことができなかった。幸い、現在は牝馬の重賞レースが整備されたこともあり、秋華賞を目標にしているデアリングタクトはミスオンワードと同じ道をたどることはないだろう。
63年前にミスオンワードがオークス以降に低迷した轍を踏むことなく、史上初の牝馬3冠をデアリングタクトには期待したい。ミスオンワードはダービー出走を熱望されたが、デアリングタクトはアーモンドアイとの最強牝馬対決実現がファンの最も期待するところだろう。
ミスオンワードと別の道を歩むデアリングタクトの今後を楽しみにしたい。