【徹底考察】天皇賞・秋(G1) モーリス「札幌記念でまさかの敗戦を喫したマイル王が挑む距離の限界。しかし、最大の『不安材料』は距離よりもむしろ……」
美浦のウッドチップコースで行われた1週前の追い切りでは、同じく天皇賞・秋に出走予定のサトノクラウンと併せ馬を行ない先着。陣営はスポーツ報知の取材に対して「至って順調。この日も長めからしっかり追った。馬体は少し増えているけど、このひと追いで締まってくると思う」と順調な調整を強調している。
【血統診断】
結論から述べると、血統的に中距離はむしろ歓迎なはずだ。血統構成だけを見れば、父スクリーンヒーローのもう一頭の代表産駒ゴールドアクター(有馬記念)よりも長い距離をこなしてもおかしくないほどスタミナに優れた配合だ。
母メジロフランシスこそ未勝利だが、祖母メジロモントレーは牝馬ながら2500mのアルゼンチン共和国杯を制すなど、豊富なスタミナとパワーを持つ。母父のカーネギーにしてもスタミナやパワーに寄った典型的な欧州馬だ。従って、本来とてもモーリスのようなスピード溢れるマイラーが生まれる配合ではない。
ただ祖父のグラスワンダーは、1400mから2500mまでの重賞勝利がある日本競馬史に残るオールラウンダー。隔世遺伝によって、マイルで高いパフォーマンスを誇るモーリスが長い距離をこなせる可能性は十分にある。
ただし、競走馬の距離適性は血統だけで判断できるものではない。菊花賞と天皇賞・春を制したキタサンブラックがその典型で、気性や操縦性によって競走馬の距離適性は大きく左右される。
例えば、菊花賞馬エピファネイアやダイヤモンドSをレコード勝ちしたモンテクリスエスを輩出したシンボリクリスエスは、その一方で1400mのスペシャリスト・サンカルロの父でもある。シンボリクリスエス×クラフティプロスペクター(アグネスデジタルの父)という配合のサンカルロは、本来マイル以上をこなしてもおかしくはないが、その気性の激しさゆえに短距離を主戦場としていた。