【大阪杯(G2)回顧】武豊マジックを上回った横典マジック!ベテラン騎手2人が新勢力で「世代交代」を宣言
3日の阪神メインレース・大阪杯(G2)では、東西を代表する2人のベテラン騎手が”魔法”を駆使して強豪ライバルを封じ込めた。
まずは、キタサンブラック(牡4歳 栗東・清水厩舎)に乗っていた武豊騎手だ。スタートからじわりとハナを奪いに行くと、外から並びかけようとするマイネルラクリマ(牡8歳 美浦・上原厩舎)を目で制して、あっさりとレースの主導権を握った。
スタートから2ハロン目を11.5秒と加速してセーフティリードを作ると、ここから”豊マジック”が発動。次の1ハロンを12.5秒にシフトダウンさせると、そこから12秒台を連発。
気が付けば、前半の1000m通過が61.1秒というスローペースを作り上げていた。
ちなみに当日の同じ阪神2000mの条件戦(1000万下)でさえ、前半の1000m通過は59.2秒。武豊はG1馬が5頭も顔を揃えたレースで、前半を2秒近く緩めたことになる。その結果、誰が最も有利になるかは言うまでもない。先頭を走っているキタサンブラックだ。
前半が条件戦よりも2秒も遅いスローペース。それはコンマ1秒を争う競馬の世界で、後方集団にとってはまさに「致命的」といえる展開だった。事実、中団を進んでいた1番人気のラブリーデイ(牡6歳 栗東・池江厩舎)、後方からレースを進めたタッチングスピーチ(牝4歳 栗東・石坂厩舎)などは、本来の実力を封じられたまま敗れた印象を受けた。
ただ、そんな武豊”渾身の計略”にいち早く気付いたのが、アンビシャス(牡4歳 栗東・音無厩舎)と横山典弘騎手だ。
いや、もしかしたら横山典騎手は最初から「今日は前に行こう」と決めていたのかもしれない。実際に外枠から出たアンビシャスのスタートは、まずまずだった。そこからこれまでなら内側の馬群の後ろに入れて折り合いをつけるのだが、今日は外側に留まったまま各馬の様子を見ていた。
もともとC・ルメールやM・デムーロ騎手でさえ手を焼くほど、折り合いに難の合ったアンビシャス。それだけに道中ではいつも手綱を抑えて脚を溜め、直線で爆発させる競馬が板についていた。
しかし、この日のアンビシャスは前に馬を置かずに折り合うと、道中はなんと3番手。これまでとは異なる積極的な競馬に、観客からもどよめきの声が上がったが、そこで暴走させないのが横山典騎手の手腕だ。