JRA「謎の主取り」ディープインパクト産駒「大盛況」も唯一の敗者……セレクトセール「平均2億円」ディープ特需に埋もれた“13番目の男”とは
新型コロナウイルスの影響がありながら、今年も大盛況で幕を閉じたセレクトセール。史上2位の売上総額187億6200万円の主役は、やはり昨年死去した大種牡馬ディープインパクトの産駒だった。
上場されたのは1歳馬のみだったが、5億1000万円で落札されたシーヴの2019を筆頭に軒並み億超えと、まさしくディープインパクト特需だった今年のセレクトセール。落札された産駒12頭で初日の売り上げの約25%をシェアしたのだから、歴史的名馬がもう1つ伝説を加えたと述べても過言ではないだろう。
だが、そんな“ディープ特需”の中、1頭だけ「主取り」となったディープインパクト産駒がいる。
主取りとは文字通り、買い手がつかずに出品した生産者自らが落札して引き取るというもの。その事情は様々だが、詰めかけたバイヤーたちのお眼鏡に適わなかった以上、基本的には“屈辱的な惨敗”といえる。
No.121として上場されたデックドアウトの2019は、紛れもないディープインパクト産駒だった。落札平均価格2億808万円という超異例の人気ぶりのディープインパクト産駒だったが、何故か本馬が登場した際には、まったく声が掛からず……。
結局、一声もないままステージを後にする他なかったようだ。
「正直、この結果には少し驚きましたね。自分の知る限りで申し訳ないですが、特別悪い話もありませんでしたし、今年でなくともセレクトセールで人気のディープインパクト産駒の牡馬が主取りになるのは異例ですよ。母デックドアウトはかつて日本のシーザリオが勝ったことで知られるアメリカンオークス(G1)の勝ち馬で、初仔でも現在馬体重400kg超えと、決して小さな馬ではなかったようですし……。
強いて言うならノーザンファームではなく、レイクヴィラファーム産だったということでしょうか。7000万円スタートが結果的には、ちょっと強気過ぎたのかもしれません」(競馬記者)
実際に、12頭が落札されて9頭が億超えだったディープインパクト産駒。しかし、大半が有限会社ノーザンレーシング(ノーザンファームの主要子会社)からの上場であり、唯一岡田スタッドから上場された馬は、ディープインパクト産駒の中では最低落札価格の6400万円に留まっている。
ただ、レイクヴィラファームはノーザンファームから経営・技術両面での支援を受け、昨年の香港ヴァーズ(G1)を勝ったグローリーヴェイズや重賞3勝のトリオンフを送り出している有力牧場。今年のディープインパクト産駒の中で唯一の主取りは、やはり「超異例」と述べざるを得ない。
しかし、その一方でこれがデックドアウトの2019の大活躍を示唆しているという声もある。