JRA社台ファーム動いた!? 西山茂行オーナー「大逆転」超大物から“直電”でリーチザクラウンが「神様」になった日【特別インタビュー】
――それは、なかなか厳しい経験でしたね……。ですが、西山オーナーはその後リーチザクラウンを種牡馬入りさせています。
西山オーナー G1を勝ってるわけじゃないから、普通なら種牡馬にはなかなかなれない。でも、ウチにはサンデー(サイレンス)の血統はあまりないし「セイウンスカイのライバルだったスペシャルウィークの仔っていうのも面白いじゃないか」と、プライベートで持つことにしたんです。
産駒が生まれて「どの程度の評価なのかな」と思ってセリにも出したんですけど売れない、売れない……。誰も手を挙げてくれなくて100万、200万でも、どんどん主取りになって「西山が売るんだから、どうせロクな馬じゃないだろう」って(笑)。
――ところが、リーチザクラウン産駒は初年度から大いに存在感を見せました。
西山オーナー 6月に一番最初にデビューしたニシノアップルパイってのが、ちぎって勝っちゃったのよ。「なんだあれ?リーチザクラウン?」って、これもセールで主取りになった馬でした。
――そこから種牡馬リーチザクラウンの快進撃が始まりました。
西山オーナー 1カ月で新馬戦を5勝しましたからね。グリーンチャンネルでも「また、リーチザクラウンの産駒が勝ちましたよ」みたいなことまで言われて。そしたら吉田照哉さんから、電話がかかってきて……。
――吉田照哉さんって、あの社台ファーム代表の……?
西山オーナー そうそう。照哉さんが「リーチザクラウンは社台ファームの生産馬なんだけど、種牡馬として半分の権利を売ってくれませんか?」って。「ぜひとも来年以降は、社台スタリオン(ステーション)の方で繋養させていただきたい」という話になってね。
――社台スタリオンステーションというと、あのディープインパクトやサンデーサイレンスも繋養されていた超名門です。
西山オーナー いや、ホントにね……。一応「ちょっと考えさせてください」とは言いました(笑)。みんなにも相談したけど、やっぱり「こんないい話、ないんじゃないですか」という結論になって。電話があったのが日曜日だったんだけど、水曜日にはここに社台ファームの方に来ていただいて、金曜日にはもうお金が振り込まれていました。
――西山オーナーがリーチザクラウンを購入された当初を思えば、大逆転ですね。
西山オーナー 驚きました。あまりないケースですし、私としてもいろいろ勉強になりましたね。セイウンスカイ(皐月賞、菊花賞)でも断られた社台スタリオンに入れるなんて。それもまだ、クビにならずに頑張ってますからね。もうリーチザクラウンは、私にとっては神様です(笑)。
ちなみに西山オーナーに「今年の2歳で、最も期待してるリーチザクラウン産駒は?」と尋ねると、ニシノガブリヨリ(牡2歳、栗東・橋口慎介厩舎)とのことだった。「リーチザクラウンを手掛けた橋口弘次郎調教師の息子さんの橋口慎介厩舎なのも縁なのかな」。まだ9月の新馬戦を勝ったばかりだが、11月の京王杯2歳S(G2)に格上挑戦する。
――ニシノガブリヨリの馬券、買っていいですか?
西山オーナー 100円だけね(笑)。
文、聞き手=浅井宗次郎