JRAみやこS(G3)「全馬返り討ち」川田将雅してやったり! クリンチャー芝ダート両重賞制覇…… 「善戦マン」を一変させた名手の秘策とは

クリンチャー 競馬つらつらより

 8日、阪神競馬場で行われたみやこS(G3)は、川田将雅騎手が騎乗したクリンチャー(牡6、栗東・宮本博厩舎)が1番人気に応えて優勝。同馬はこの勝利により、18年の京都記念(G2)以来、約2年9か月ぶりとなる勝ち星を挙げるとともに、芝・ダート両重賞制覇も達成というオマケもついた。

 陣営としても喉から手が出るほど欲していた勝利だったに違いない。

 終始、積極的な位置取りで競馬を進めたクリンチャーが、2着に入ったヒストリーメイカーに3馬身の差をつけて完勝。4歳秋には凱旋門賞(G1)にすら挑戦したかつての素質馬が、待望のダート重賞勝利を手に入れた。

 10頭立ての少頭数で行われたレース。武豊騎手のベストタッチダウンがハイペースで飛ばし、これをマークした松山弘平騎手のエアアルマスが2番手で追走。クリンチャーの川田騎手は出たなりではなく、あえて促して外目の3番手のポジションを取りに行った。

 1000m通過が60秒5で流れた急流に、前を行く2頭は息を入れるタイミングがない。勿論、これは追いかけるクリンチャーにとっても同じ条件だが、川田騎手には想定の範囲内の作戦だった。結果的に共倒れしたライバルを置き去りに悠々と抜け出した姿に、かつての善戦マンの面影は残っていなかった。

 レース後、川田騎手は第一声に「無事に結果が出て何より」と、まずはパートナーを労った。続けて「たくさん映像を見て持久力に長けた馬というイメージ。その特長を生かそうと。返し馬で乗って、やはり瞬発力ではないなと感じてこういう競馬を選択しました」とコメント。川田騎手曰く「早め早めに動かして他の馬が垂れるような競馬をした」作戦を振り返った。

 19年の京都大賞典(G2)9着を機に、ダートに転戦したクリンチャー。ダート初挑戦となった仁川S(L)で2着と適性を見せた。だが、5戦して【0.4.1.0】と善戦する一方、1着には手が届かないもどかしい競馬が続いていた。

 さらに、福永祐一騎手とのコンビで臨んだ前走の太秦S(OP)では4着と敗れ、ついに馬券圏内をも外してしまった。それだけに、是が非でも巻き返したかったクリンチャー陣営としては、みやこS勝利の感激はひとしおだったに違いない。

「確かにこれまでのクリンチャーのレースぶりは、前に行っては何かしらに差され、後ろから行っては前の馬を捉え切れないというあと一歩の競馬が続いていました。この現状打開策として川田騎手が導き出したのがスタミナ比べだった訳ですが、読み通りに結果を出せたのはさすがです。

冷静に振り返れば菊花賞(G1)2着、阪神大賞典(G2)3着、天皇賞・春(G1)3着と長距離で勝ち負けをしていたほどのステイヤーでした。1800mなら多少強引なレースをしても、スタミナ勝負なら分があるのは納得できますね」(競馬記者)

 勿論、今回の圧勝劇は川田騎手の好騎乗なしに語れない。初コンビのパートナーの特徴を事前に映像を見て把握していた予習の賜物だろう。これに一発回答で応えた人馬もまた、見事だった。

 人気を分けたライバル・エアアルマス、ベストタッチダウンはお手馬だった相手だ。それ以外にもスワーヴアラミスやマグナレガーロも騎乗経験がある。

 自身が他の騎手に手綱を譲った馬すべてに返り討ちとなった川田騎手としても、会心の勝利となったのではないだろうか。

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