JRA M.デムーロは「何故」大舞台で勝てなくなったのか。安藤勝己氏が指摘した「無難さ」と「神」が降りた重賞9週間連続3着以内
『netkeiba.com』で連載中のインタビュー企画『M.デムーロ世界一になる Road to No.1』で、サリオスと挑むマイルCSについて「自信があります」と意気込みを語っていたデムーロ騎手。
「インディチャンプも強いし、アドマイヤマーズもレシステンシアもいる。今年は半端なく強いメンバーが揃ったと僕は思うよ」とグランアレグリア以外のライバルにも警戒を強めていたが、レースは皮肉にもその言葉通り、インディチャンプやアドマイヤマーズにも先着を許す辛い結果となった。
「大舞台に強い」というフレーズはデムーロ騎手にとって、お馴染みの謳い文句であり、何よりの名誉だろう。
しかし、今年は春こそ大阪杯(G1)とNHKマイルC(G1)を勝って健在をアピールしたが、実は重賞勝ちはそれが最後……。5月10日のNHKマイルCから半年以上、G1どころか重賞勝利からも遠ざかっている。
この日のマイルCSでも、今のデムーロ騎手の「不調ぶり」が集約されたような騎乗だったと述べざるを得ない。
今回初騎乗となったサリオスは、同時にJRA騎手としてデビューするなど、長年のライバル・ルメール騎手からの“おこぼれ”だったが、それでも今のデムーロ騎手にとっては極めて大きなチャンスだったに違いない。
しかし、レースではまさかの出遅れ。特に促すこともしないまま、後方から終始外々を回らされての5着……結果的に、大外枠の不利をまともに受けた騎乗だった。
「レース後、デムーロ騎手が『内に行くことも考えたけど、スムーズな競馬がしたかった』と話していましたが、レースは前残りのスローペースだったので、外から行くなら早めに進出する選択肢もあったはず。元JRA騎手のアンカツ(安藤勝己)さんも『あの枠引いたら押してポジション取らんと』(公式Twitter)とコメントしていましたね。
一方で、単勝187.8倍の13番人気だったスカーレットカラーは、岩田康誠騎手の勇気あるイン突きがハマっての4着。レース後には高橋亮調教師が『ジョッキーが最高の騎乗をしてくれた』と絶賛していましたし、アンカツさんも『最初からインを完全に狙っとった。ヤスナリ(岩田騎手)とのコンビでなきゃなかった4着やね』と評価していました」(競馬記者)
リスクを背負ってインを突き最高の騎乗を見せた岩田騎手と、リスクを嫌って外から無難に乗ったデムーロ騎手――。無論、13番人気と2番人気という立場の違いはあったが、大舞台ではリスクを背負ってでも勝ちに行くのが、かつてのデムーロ騎手だったはずだ。
3年前、2017年の秋はまさに「デムーロの秋」だった。
開幕戦のスプリンターズSを勝つと、菊花賞、エリザベス女王杯、マイルCSとG1を次々勝利。マイルCSまでの秋G1・4勝は今年のルメール騎手と同じであり「日曜日の重賞」に限っては、8月の新潟記念から9週間連続で馬券圏内と、まさにデムーロ騎手にしかできないような神懸かった勝負強さを見せていた。
「どんどん勝ちたいし、どんどん上手くなりたい」
自分の勝利や成長への貪欲さを隠さないのがデムーロ騎手の真骨頂であり、勝負強さの源であったはずだ。しかし、この日、サリオスに騎乗したデムーロ騎手は、どこか無難であり「普通の騎手」といった印象だった。