【徹底考察】阪神JF(G1)リスグラシュー「矢作調教師もご執心!? 前走の内容に見る着差以上の潜在能力と『たったひとつ』の不安」
強豪ひしめく2歳牝馬路線。すでに「近年で一番豊作なのでは」「最強世代キタ」などと、多少先走り気味のコメントもネットに散見されるが、ソウルスターリングをはじめ良血の素質馬や派手な勝ちっぷりを見せた期待馬も多く、そう思わせるだけのメンバーが揃っていることは確かだ。
そんな中でも、すでに世代トップクラスは確実と思える成績を残しているのが、阪神JF(G1)に出走するリスグラシュー。管理する矢作調教師がデビュー前からその馬体を絶賛したため、キャロットファームの一口募集の際に大人気になり、出走前からすでにPOG界隈でも注目の的となった。
夏の新潟で迎えたデビュー戦は、1番人気に推されながら前残りの流れで脚を余して2着。この敗戦で一旦は人気を落としたが、中1週で迎えた未勝利戦で牡馬を相手に4馬身差の圧勝を収めた。この時の走破時計1分46秒2は、阪神芝1800mの2歳レコード。このタイムだけ見てもすでに十分な素質を示している上、好位のインでプレッシャーを受けながらも、折り合いを欠かない大人びたレースぶりを見せており、2走前の時点でかなりの完成度だったことが伺える。
さらに、その完成度の高さを裏付ける結果となったのが、前走のアルテミスSだ。
【前走考察】
10/29 アルテミスS(2歳G3・牝・芝1600m)
デビュー以来初の大外発走だった前走。まずまずのスタートから好位の外めでレースを運び、道中はじっと脚を溜める立ち回りで直線へ。残り300mまでは馬なりでジリジリ脚を伸ばすと、武豊騎手の左ムチに応えて一気に加速。そのまま楽に前を交わし、後続の追撃も振り切って重賞初制覇となった。
2着との差はコンマ1秒と平凡ながら、負かした相手はラキシスやサトノアラジンの全兄弟で、こちらも良血の素質馬と評判だったフローレスマジック。加えて、3着以下には3馬身以上の決定的な着差をつけており、2頭の力が抜けていた可能性は極めて高い。
高評価したいポイントは、レコードを叩き出した未勝利戦とはまったく別のレース内容で勝ち星を挙げていること。未勝利は内枠から馬とラチの間で揉まれる競馬、アルテミスSは外枠から馬群の外を回して快勝と、ある意味両極端のレースをしていることがわかる。競走馬は繊細な生き物で、例えば内枠でも揉まれて走らなくなる馬がいる一方、ロスなく回ったことが良い方にでる馬もいる。同様に外枠にしても脚が溜まらず凡走する場合もあれば、多少の距離ロスをしても伸び伸び走れることが能力を引き出すパターンもあり、一概に内・外の有利不利をつけることは難しい。